北原秀次が雪里に強引に道場の門まで引きずられる前に、道場の中から軽快で互いに響き合う足音と、ときどき竹刀がぶつかる音と大きな声が聞こえてきた。扉を開けて見ると、場の中で冬美が妹たち、夏織と夏沙と激しく戦っている。その一方で胴甲を着ている春菜は一番端に跪いて見ており、手にはタオルを持っていて、顔の横から流れる汗をそっと拭いていた。
道場は小さく、一組だけが試合をするのに適している。雪里は期待外れで北原秀次の手を放し、「今日は吉日じゃない。何をしてもうまくいかないし、ちょっとイライラする」と不機嫌に言った。
北原秀次はさっき雪里に腕をひねられそうになったので、今は肩をもんで何も言えなかった。誰が雪里と結婚するのか、その人はきっと八代続けて血塗られた不運に見舞われたに違いない。彼らは事件・事故保険と生命保険を先に買うべきだろう! 彼女が興奮してハグをすると、思わず夫の肋骨を32本に抱きしめることがないかもしれない。もし彼女が超興奮して、夫の体が少し弱っているなら、彼を直接骨灰にすることもありえる。
だが、せっかく来たので、肩をもむ余裕もあり、ついでに場の中もじっくりと見てみた。すると、冬美が暗赤色の防具を身につけ、標準的な竹刀を手に持っていて、激しく鳴り響いていることを確認できた。
だが、夏織と夏沙もそれを甘く見てはいなかった。二人は全身黒の軽量防具を纏い、まるで二人の小さな忍者のように飛び跳ねて動き、片方が左、もう片方が右から冬美を挟み撃ちにする。動きは非常に活発で、更に彼女たちは長さ八尺以上の丸い先端の練習用槍を持っており、冬美と力を競うわけではなく、ただ角度を変えてから攻撃していた。
冬美がそのうちの一人に猛攻撃を仕掛けるが──北原秀次にもどちらであるのか区別がつかない、この二人の子どもはまるで瓜二つだ──しかし、夏織と夏沙は、これが剣道の試合であることなど、少しも気にしていないようだ。剣道のルールなど、全く考慮せず、冬美が接近してきたら、そのうちの一人がその場から逃げ出し、頼もしく転がりながら、転がり終わると冬美の足首をこっそりつつき、もう一人の攻撃を受けていない方が冬美のお尻に向かって槍を突き出す。その実に陰険かつ凶悪な行動には、驚かされる。
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