週末、コナンは口実をつけて毛利探偵事務所を抜け出し、高成のところへと向かった。
依頼人が黒衣組織の殺し屋かどうかまだ判明しない状況で、コナンは高成からその事件の切り抜きを要求した。
切り抜きの事件のうしろはすべてが最近高成が解決した案件で、システムによって改ざんされた米花神社の報道も含まれていた。コナンはそれを見て少し疑ったが、それ以上は考えずに前に進んだ。
高成が関与した事件の中に、特に誰かを雇って復讐するようなものはない。むしろ、最初の城戸のおじいさんの事件が可能性がある。
「おじいさんのあたりはこの事件ばかり?」コナンは好奇心から尋ねた。
「他にも一部のファイルがロッカーに入っているが、それほど多くはない。」高成は考え込んで言った。「おじいさんは以前ずっと海外で探偵だったそうだ。もし殺し屋がもともとおじいさんに狙われていたと考えたら、それは可能性があるかもしれない」と。
コナンは仕方なく、残されたファイルを探すしかなかった。
この日、警察も高成の安全を保つための人を派遣してきた。予想外にも彼はコナンの中で良好だった高木警部高木涉だった。青さがつやつやしていて正直な感じにはやや頼りないが、能力は悪くないと目暮が言っていた。
コナンがファイルを調べているとき、外出の準備をする高成に困った顔で高木が尋ねた。「城戸くん、本当に今、出かけるつもり?もし殺し屋があなたを狙っていたら......」。
「その殺し屋は慎重すぎるから、いつまでもこれは策略だ。」高成が後頭部をこすりながら笑い、木刀洞爺湖を持って言った。「高木警官が僕を保護してくれるじゃないか。安心して、何も問題はないよ。」
高木は名誉と心配を交えて言った。「確かにそう言いますが、しかし......」
「私も一緒に行こう。」コナンは瞬時にファイルを見事に読み終わり、高成の口角が引きつるのを見て言った。「困ったね、前はものすごく怖がっていたのに、依頼が来るとすぐにすべてを忘れてしまったようだね。」
「依頼料は50万円だよ!」高成は不平を言った。「それに依頼内容はただ剣道の集まりに代わりに参加するだけなんだよ。50万円手に入るなんて、普通じゃないだろ?それにより、裏に潜む人を引きずり出す絶好の機会だったんだ!」
「つまり、50万円のことを考えているだけなんだろ?」コナンが眼を転げ、「そうだね、私も一緒に行くことにする。相手は私という子供を気にすることはないでしょう。」
「それは……」高木はどういうわけかコナンが子供であることを尋ねたかったが、口を挟むことができず、ただ呆然と城ヶ戸探偵事務所を出て行った。
......
諏訪邸、歴史の感じられる日本風の建物の外側では、高成一人がハウスキーパーに導かれて中庭に入った。
「私は大丈夫だ、あなたが心配なのは、あの子供だろう。」高成は高木警部が周囲を観察する間隙を見て、苦笑しながらコナンに言った。「なぜ絶対についてくるんだ。もし君が巻き込まれたらどうするんだ?」
コナンは半開きの目で口を尖らせた。「私が迷惑だとでも言うの?博士の発明もなかなか強力だよ。君より劣っているとは思えない。それに、俺に調査を頼んだんじゃなかったの?ここに来なかったらどうやって調査するんだ?」
一行は主屋に入ると、すでに中には人々が集まっていた。すべて剣道関係者で、若い高成達3人を見るとみんな驚いた。
小さな子供を連れてこのような集まりに参加する人はあまりいない。それに刀を持っていたのは高成だけで、彼も若すぎる。
「もしかして、あれは京都の高校生の剣道の天才、衝田総司?」と、状況がよくわからない若者が、高成を好奇心から観察し、隣の人に小声で尋ねた。「諏訪さんも招待しているんですか?」
尋ねられた人は首を振った。「わからないけど、たぶん衝田総司じゃないよね?今回、京都から来る人がいるなんて、聞いたことないよ。」
若者は困って言った。「以前、大阪の剣道大会で遠目に衝田総司を見たことがあるのだ。まるでそっくりだ。」
会場で皆がひそひそ話をしている中、一人の男が和服を着て、真剣を携えて入ってきた。
その男はヒゲをたくわえた目が細い青年で、冷静かつ厳格な顔はすこし危険に見える。
「訪問先生!」
男性が入ってきたとき、会場の議論は突如として止まり、「その刀を見せてもらえますか?」と質問が飛び交った。
諏訪雄二の表情はあまりよくなかった。一言も言わずに人々の間を通り過ぎて、座っている高成に気づくと足元がふらついた。
ただ座っている少年を見ているだけなのに、何とも言えない感覚がする。まるで、越えることのできない大きな山に直面しているようだ。
幻かもしれない。銀髪の侍が自分に向かって笑っているように見える……
諏訪雄二は目を細めて、突如として刀を抜き、高木が反応する前に高成に向かって大きな一歩を踏み出し、斬りかかった。
「ぁ!」
「危ない!」これから起こる危険なシーンに、高木は高成を押しのけようとしたが、行動に移す間もなく、洞爺湖の木刀がスピーディに諏訪雄二の喉元を指し示した。
「バン!」
刀は斜めに木目床に突き刺さり、柄が連続して揺れた。
諏訪雄二は驚愕の表情を浮かべ、赤くなった手首をこすりながら、高成が手に持つ洞爺湖を複雑な表情で見つめた。「この木刀は……」
彼はただ試すつもりだったのだが、力を緩める前に、家伝の剣道は瞬時に打ち破られた。現代社会でこんなに強い剣客が存在するとは信じがたい。さっき本当に死の脅威を感じた。
「洞爺湖。」
高成は疑わしげに木刀をしまう。
彼は男の殺意を感じ取らなかった。さっきは力を抑えているように見えた……
「洞爺湖?現代の若者は見て見ぬふりのできないものだ。木刀をこのレベルで使えるとは、初めて見たよ!」諏訪雄二は地面から自分の刀を引き抜き、高成をじっと見つめ、驚いた高木に向かって言った。「心配しないで、この若者はおまえよりもずっと優れている。ただ試してみたかっただけだよ。」
「え?城戸君は僕よりも優れている?」
高木は今しがたの一件からまだ立ち直れず、頭が混乱している。ボーッとして自分の立ち位置に戻った。
その頃、諏訪雄二も驚愕の心情を抑え、自分の主席に戻った。
「皆さん、申し訳ありませんが、次回まで待ってください。次回、菊千代を皆さんにお見せしましょう。」
「菊千代?」
会場が剣道の経験を共有し始めたとき、隣の青年に尋ねる高成。「菊千代って何?」
青年は高成を冲田総司と間違えた人物だ。さっき高成の剣術を見たばかりで、軽視することはできない。熱心に語った。「菊千代は諏訪家が代々受け継いできた名刀で、普段からこの刀を一目見ることが難しい。今回はほとんどの人がこの名刀目当てに集まった。」
青年は他の人を見て、小声で言った。「でも、諏訪先生がお金を借りるために菊千代を抵当に出したみたいなんですよ。」
「お金を借りる?」とコナンは尖った耳を使って、諏訪雄二がお金に困っているらしいとキャッチした。一時的に諏訪雄二を嫌疑人から除外した。なんたって50万円も、この人が出すとは思えないが、嫌疑人に買収される可能性はある。
「どうだった?」と高成が近づいてきて聞いた。「怪しい人を見つけたか?」
コナンは首を振った。「この人たちはどうも違うようだ。もっと見てみよう。」