午後一時を過ぎ、秋太郎は遊び疲れてお腹が空いていた。春菜はまず冬美の携帯電話に電話をかけたが誰も出なかった。次に北原秀次の携帯電話にかけても応答がなく、不思議に思って雪里の携帯電話にかけた。やっと通じたので、いつ一緒に昼ご飯を食べるか聞いてみたが、雪里は分からないと言い、ただ場所だけを伝えて先に来るように言った。
春菜はすぐに秋太郎を連れて駆けつけたが、北原秀次と冬美以外の全員がベンチに座ってぼんやりしているのを見て、不思議そうに尋ねた。「北原ニーサンと姉さんは?」
式島律は呆れた様子で近くを指差した。春菜が振り返ると、「狂ったコーヒーカップ」の中の一つのカップが特に激しく回転していて、人影さえ見分けられないほどで、まるで今にも土台から離れて空に昇っていきそうだった。
春菜は少し驚いて二度見してから、振り返って尋ねた。「二人は遊んでいるのに、どうしてみんなはここに座っているの?」
雪里は元気なく答えた。「私は4回乗ったけど、もう乗れないわ。」
「他の人は?」
「15回か17回かな?とにかく20回近くよ。」
「え...これはどうして?」
「二人はまた意地を張り合って、誰が先に降りるか勝負してるみたい。」
春菜も呆れた。普段の北原秀次は年下の自分たちに対して寛容で大らかで、とても兄貴らしい態度で、ほとんど怒った姿を見たことがなかった。でも、完全に怒りを持たない善人というわけでもなく、おそらく家族の中では姉さんだけが彼を怒らせることができたのだろう。
でも今回は一体何が原因なの?
…………
「無理しないで、早く降りなさいよ!あなたは私たちの家族をたくさん助けてくれたのに、後で吐いたりしたら、私が恩知らずな悪人になってしまうじゃない!」冬美はもう回転に耐えられなくなっていたが、必死に我慢しながら、北原秀次に言葉で攻撃を仕掛けて自主的に降りるよう仕向けようとした。
北原秀次は必死に胃液を飲み込んで吐き出さないようにしながら、かろうじて微笑んで言った。「心配しないで、それは別の話さ。私が君たちの家族を助けたのは、お父さんの顔を立てたかっただけだし、私はそんな恩を着せるような人間じゃない。これは公平な勝負で、他のことは関係ないよ。」
「そう、じゃあもう一回?」この馬鹿はまだ降りないの?
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