内田雄馬が落ち込んでいたのもつかの間、B組の女子たちが義理チョコを配り始めた。ただし、義理チョコを配るにも作法があった。
北原秀次がこの特別な日に誤解を招くことを心配していたように、義理チョコを贈る際の最も重要なポイントは「周りの人や相手に誤解されないこと」だった。リラックスして自然に渡すため、B組の女子たちは2、3人のグループを作り、堂々と公の場で渡していた。
あっという間に、北原秀次は5箱のチョコレートを受け取った。どれも美しく包装され、女子たちが既製品とはいえ、丁寧に選んだことが伝わってきた。彼が受け取ったものは式島律や内田雄馬が受け取ったものと全く同じで、誤解を招く余地は全くなかった。
一人で贈る人もいた。例えば、転校生の安井愛は、クラスの女子たちとは仲が良かったものの、まだどのグループにも所属していなかったため、大量の手作りチョコレートを作り、笑顔でクラスの男子全員に配った。北原秀次ももらったが、安井愛は彼以上に誤解を恐れていたようで、わざわざカードを添えて「彼女と一緒に楽しんでください!」と書いていた。
クラスの男子全員に配られただけでなく、教壇にも一つ置かれていた。女子たちが共同で購入したもので、男性教師全員に配られるものだった。
クラス全体で祝う雰囲気は素晴らしく、教室中にチョコレート特有の甘い香りが漂っていた。女子たちは楽しそうで、みんな甘い笑顔を浮かべ、男子たちも元気づいて、丁寧で優しい態度で接していた。まるでこの日、クラスの女子全員の可愛さが800ポイントアップしたかのようだった。
しかし……
雰囲気は確かに温かかったが、義理チョコは今日のメインイベントではなく、裏では激しい波が立っていた。学校中で告白事件が相次ぎ、ゴシップ好きの内田雄馬は休み時間中ずっと携帯電話をいじりながら、彼と式島律にリアルタイムの戦況を報告していた——
「E組の七之宮さんが伊上君に告白したんだって!しかも人前で!」
「G組の佐藤君が告白の手紙を3通も受け取ったらしい!」
「2年生の五花先輩がA組の小鳥遊君に手作りチョコをあげたって!」
「……」
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