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96章 葉子

周囲の忙しい人々を見て、葉子は自分が再び世俗の町への日を向かえるとは思っていなかった。

辺境の町の領土に入った後、その一つ一つの低い煉瓦と土の平屋が、長い間封印されていた記憶のように次々と彼女の目の前に出現した。まだ果ての山脈へ逃げ込んでから半年も経っていないのに、彼女は目の前の景色がほかの世界のように見えるほど奇妙に感じていた。

邪鬼の月が過ぎたばかりで、衣食不足の冬季を過ごした町の人々は、顔色も体調も非常に悪いはずだ。葉子は、共助会が冬に銀光市の貧民窟を通りかかった、飢えや寒さで死んだ人々の死体があちこちに散らばっている状況を覚えている。生き残った人々も死者のようにふるまい、表情は麻痺し、動作は遅くなっていた。

しかし、ここでは、彼女が見た人々のほとんどが元気に見えた。干物を家の前で干している人がいた。屋根の損傷箇所を修理するために屋根に上がる人がいた。それ以上に多くの人々、特に鍬やハンマーを持って北部の小さな町に向かっておしゃべりしながら歩く強壮な男性たちがいた。葉子はこのような状況になると、脱帽を深く垂れ、できる限り避ける。

城はとても目立つ位置にありました。町の西南部にある高い斜面の上にあります。周囲には使えるような植物はほとんど無く、音を立てずに忍び込むのは非常に難しい。木幹の中に隠れて敵から身を隠す事は出来たが、木に登り自分を運び込むとなると、その動作は大きすぎる。

彼女は隠れるのが得意な魔女ではない。何度も考えた後、葉子は隠れて潜伏するよりも、堂々と城に足を踏み入れた方が良いと思った。

もしナイチンゲールが彼女をだました訳ではないなら、正面の門から入っても問題はないはずだ。

もしナイチンゲールが彼女を、共助会の姉妹たちをだましたのなら、彼女は自信を持って、門の前の二人のガードからの追撃を脱出することができる。

もちろん、最悪のケースとはナイチンゲールが全ての人を裏切り、魔女の捕獲によって王子に仕えることになったなら、彼女はほとんどここで死ぬことになる。トップランクの戦闘型の魔女であるナイチンゲールの追撃から逃れられる者は少なく、ハカラのような強者でさえ必ず勝てるわけではない。

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