くそ!どいつめの王子にゃあ!ただの荒れた山とヒルズに放り出された哀れな虫じゃないか!と、コリスは激しく思った。しかし、自分の後ろに剣の柄を握る二人の近衛兵がいることを考えると、その怒りを一時的に抑え込むしかなかった。
城の大門を出て、近衛兵が去ったのを見て、男爵はやっと一息ついた。
彼はベトベトになったハンカチを取り出し、額を拭った。そして、思いっきりつばを吐き出し、そのつばが王子の顔に当たるイメージを脳裏に浮かべる。それだけではまだ溜飲が下がらないので、彼はもう一度そのつばの上を、しっかりと踏みつけ、心の中でようやく安堵した。
邪獣を阻止したってどうだ、あなたが西境で足場を固められるとでも思っているのか?続けて得意になっていくだろう、どれだけ長く得意が続くか見てやるよ。と、コリスは心の中で思った。信頼できる情報が無ければ、彼はせっかちに辺境の町に来ることはなかった。通常、貴族は一般市民よりも遅く町に戻ってくる。だって、鉱山での鉱石採掘や狩りといった厳しい仕事は彼らにはまわってこないからだ。生産状況を監視するためにたまに鉱山に行き、鉱石が割り当てられる日を待つだけだ。余暇の時には、ハンターの家に行って、購入に適した上質な毛皮がないか確認することもできる。
しかし、今年の状況は違った。コリスは財務管理者であるフェレノから、レイン公爵が四王子を西境から追放しようとしているという話を聞いた。これはグレーキャッスル王国に対する背信行為ではなく、新王ティフェーコ.ウェンブリトンの教旨に従った行動である。「ローラン.ウェンブリトンはもはや辺境町の領主ではない。新たな領土は、彼が王都に戻って任務を述べたあとで再度授与されるべきである。」
フェレノとは何者かというと、公爵の側近で、わずか五年で市政官から財務管理者の地位に昇進した人物だ。遠縁の親戚を通じて毎年彼に良い毛皮を二枚送っておかなければ、自分は西境の領主の思惑を知ることができなかったであろう。
「王都に戻って任務を述べ、その後で領土を再授与される」とはいい響きの言葉だが、コリスでさえ知っている。大王子は二言もなく断頭台に送られた。四王子が今回行ってしまったら、新王を許すわけがないだろう?
Support your favorite authors and translators in webnovel.com