黄昏時、夕日に照らされて馬車の影が長く伸びている。
ベンソンとメリッサに一声かけておいたクラインはブラックソーン・セキュリティ社で夕食を済ませ、ニールと一緒に乗合馬車で埠頭区へ向かっていた。
この日は以前の安物のスーツを着ていた。こういう場所では揉め事が起こりやすい。もし普段大切にしている燕尾服を台無しにしてしまったら、心が痛むなんてもんじゃない。
空が燃えるような夕焼けに染まった頃、馬車が止まった。いつものクラシックな黒いローブと同色の丸つばフェルト帽を身に着けたニールは、周囲の目を気にすることなく斜め向かいの「ドラゴンバー」に向かって歩き出した。
バーとは少し離れていても、重厚な扉が閉ざされていても、クラインには店内の度々沸き起こる歓声が聞こえる。それはまるでどこかの「ヒーロー」に声援を送っているかのようだ。
近くまで来ると、ふと何かを感じ取り、バーの向かいにある貨物倉庫に目をやると、屋上の目立たない場所に制服を着た屈強な男が立っている。
男は大きな灰色の金属ケースを背負い、手には複雑な構造の太くて長いライフルを持っている。
灰色の金属ケースと同色のライフルとの間は明らかにパイプで接続されている。
「高圧蒸気ライフル?」驚いたクラインはそうつぶやくと、ニールのほうを見て尋ねた。「このバーはこんな武器まで持っているんですか?」
これは軍事規制品だぞ。
抽出した燃素を使用しているが、それでも高圧蒸気バックパックは驚異的なサイズと重量で、真の鉄血の戦士でなければ到底扱うことはできない。そこから発射される銃弾は極めて高速で、凄まじい破壊力がある。
これに適切な照準器をつければ、粗悪な狙撃銃とほぼ変わらない。
「なに?」ニールは目を細めて向こうを見ると、同じく怪訝な顔をした。「何かあったようじゃな。」
何かあった?クラインが周囲を見渡すと、案の定、連発銃を持った数人の男が何かを捜している。
「何かあったのか?」ニールはバーに近づき、外に立っている大男に尋ねた。
大男は明らかにニールを知っているようで、顔を引きつらせて苦笑した。
「さっきはバーがぶっ潰れちまうかと思ったぜ。」
Apoie seus autores e tradutores favoritos em webnovel.com