北原秀次が去った後、冬美は道場に入り、地面に倒れている人形を起こして注意深く観察した。北原秀次が毎日投げ回していたせいで、本来は突きの練習用だったこの人形はバラバラになりそうだった。
彼女はしばらく見つめた後、眉をひそめて考え、ついでに人形を逆さ背負い投げで投げた。腰の動きは格好良かったが、投げた後は何も感じなかった——おかしいな、あいつはなぜ毎日この人形を投げているんだろう?これじゃフィットネスにもならないだろう?何の意味があるんだろう?
でも体育祭で何人もの男子学生を合気道で投げ飛ばしたのは、確かに合気道の技だった。でも前は合気道を習っていた記憶がないのに!まさかこうやって人形を投げているだけで、あんなに上手くなったの?
これは科学的じゃない……
以前、何日も続けてにんじんを切って、家族がにんじんを食べ飽きるほどだったのに、突然料理が上手くなったこととも関係があるのかな?
冬美はしばらく考えて、思わず笑ってしまった。自分が考えすぎだと思った。あいつはきっと前から出来たんだ。ただちょっと神経質で、変な癖が多いだけ。馬鹿なことをするのも普通のことだ。
彼女は道場を出て、時計を見てから浴室に向かい、ドアを叩きながら大声で叫んだ。「二人とも、お風呂に一年もかかるの?早く出てきて宿題しなさい。中で怠けないで!」
…………
北原秀次は台所に入り、冬美が作ったメニューを見て、手で丸めてゴミ箱に捨てた——家族が食べられるのは幸せなことだ。毎日みんなに栄養のない食事を出すなんてダメだ!お金を稼いでも全部貯金するなんて、何のために稼ぐんだ?緊急用の資金を残すのは正しいけど、生活の質を上げるのも必要だ!
彼は冬美の計画など全く気にせず、販売用の牛肉を大きく切り分け、今夜はビーフカレーライスを作ることにした。春菜は自発的に手伝いに来た。カレー粉を調合し終わり、春菜にどんなスパイスを加えると味が良くなるか教えているところに、内田雄馬が来た。
彼は少し驚いて、笑いながら尋ねた。「内田、何かあったの?」
内田雄馬は丁寧に、まず春菜に挨拶をしてから、キッチンカウンターの前に座り、照れ笑いしながら尋ねた。「北原、来週末時間ある?」
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