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第109章 入ってきた客を一人残らず_2

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「失礼します!」木村光彦は軽く暖簾をくぐってこの目立たない路地の小さな店に入った。通りがかりに香りが漂ってきて、自分も空腹だったから入ったものの、普段なら無名の店には足を踏み入れないはずだった——同僚にこんな店に出入りしているところを見られたら体面に関わる。他人から、この人は出自から抜け出せない、器が小さくて大成しないと思われかねない。

冬美は相変わらず給仕を務めており、木村光彦が入ってくるのを見て月のような目が急に輝き、喜んで彼の服装を細かく観察した。相手が高級な手作りスーツを着て、左胸に「八」の金メッキバッジを付けているのを見て、すぐに深々と一礼して叫んだ。「いらっしゃいませ、こちらへどうぞ」

こんなに早く騙し込めるとは、バッジを見るとこいつは名古屋ユニオン銀行の社員だ。この年齢では幹部なんてありえないが、この種の人の収入から言えば、まさに肥えた羊だ。

日本の状況は中国とは異なり、大手銀行は名門校出身者しか採用しない、真のエリートが集まる場所だ。同じレベルの公務員の収入はこれらの人々の手当てにも及ばない——結局のところ、大手銀行は日本財閥の三位一体戦略の核心なのだ。

木村光彦は二十六、七歳ほどだが、性格は落ち着いていて、エリートホワイトカラーの風格があった。突然カリフラワーのような頭の人が飛んできても動じず、軽く頭を下げてからカウンター席に着き、居酒屋の内装を見回した。ここは非常に趣味の悪い装飾で、昭和時代の名残があり、おそらく一般のサラリーマンが仕事帰りに安酒を飲みながら上司の悪口を言うような場所だった。

こんな店に入ってしまったことを少し後悔し、さらにシェフを見上げると、より眉をしかめた——この店の料理長は若すぎるんじゃないか?もはや若く見えるという説明では済まされない。

冬美はとても丁寧で、純味屋が開店して二年以上経つが、このような高級な太客はほとんど見たことがなかった。今回は特に熱心に接客した。まず温かいタオルを出し、次に麦茶を出し、そして丁寧に尋ねた。「お客様は何になさいますか?」

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