陽子は心の中でほっと安堵の息をつき、急いで肩でドアを押し開け、慎重にトレイを持って中に入った。そして磁器のティーポットから湯気の立つ紅茶を一杯注ぎ、最後に優しく微笑みながら神楽治纲の前に置いた。
神楽治纲は茶碗を見下ろし、眉をひそめて尋ねた。「このお茶は、お前が入れたのか?」
陽子は素直に頷き、彼の傍らに立って答えた。「はい、お祖父様」
彼女はこの大屋敷から出ることはできないものの、中では自由に動き回れた。そして皆が彼女に対して恭しく接していた——神楽治纲は部下に厳しく、誰も彼の孫娘を軽んじる者はいなかった。お嬢様が台所でお茶を入れたいと思っても誰も止められなかった——以前お兄さんにお茶を入れると、いつも喜んでくれたから、ここでも同じだろうと思ったのだ。
しかし神楽治纲は首を軽く振った。「間違えている。これはブリティッシュCTCティー、つまり粒状の茶葉だ。この種類は確かに淹れると香りは出やすいが、渋みも強い。新鮮なミルクを加えて渋みを消し、茶の香りを調和させるべきだ。レモンジュースを入れるのではなく……少なくともミルクも一緒に持ってくるべきだった。ティーポットだけではいけない」
陽子は呆然と聞いていた。神楽治纲のこういった些細なことにも真面目な態度は、北原秀次の几帳面さに三分通じるものがあった。もちろん、北原秀次の話し方はもっと穏やかで優しかったが、彼も年を取るか高い地位に就けば、こんなに威厳があり直接的な物言いになるのかもしれない。
神楽治纲はまだ話し終えておらず、続けて言った。「この種類の茶で有名なのはアッサムだが、砕かれた茶葉は通常茶の性質が強く、この時間に飲むのは非常に不適切だ。睡眠の質が下がり、明日の仕事に重大な影響を及ぼす。この種の茶を選ぶなら、朝が最適で、アフタヌーンティーにも適していない……」
彼は教育者の姿勢で長々と説明し、最後にさらりと言った。「お前にはまだ学ぶべきことが多い。基本的な社交知識は最低限身につけておくべきものだ。覚えておけ、お前は今は神楽姓を名乗っている。神楽家の一員として、家族の名誉を傷つけないことも、お前の果たすべき義務だ」
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