通りにはまだ人影もまばらな時間、北原秀次は早くも私立大福学園に到着し、教室に直行して自分の席に座り、昨日解き終わらなかった数学の問題に取り組み始めた。
百次郎はもちろんアパートに置いてきた。まさか犬を学校に連れてくるほど狂ってはいない。ただし、出発前に百次郎に警告(脅し)をしておいた。今は仮住まいの試用期間だから、帰ってきた時に部屋の中で何か壊れていたり汚れていたりしたら、即刻追放する、容赦はしないと。
ペンを噛みながら解法を考えていた。大学に入って二年近く経つが、公式はほぼ覚えているものの、解法のテクニックはほとんど忘れてしまっていた。教室も徐々に騒がしくなり、多くのクラスメートが登校してきて、日直は日直の仕事を、黒板に時間割を書く者は書く者の仕事をしていた。
北原秀次は日直などの活動に参加することは別に構わなかったが、高校の自治システムの基層幹部、つまりクラスリーダーは彼の素性を知っていて、この偽学霸で第一階層の人気者に特別待遇を与え、クラス内の役割として「飼育管理者」を任命した。これは超がつくほどの楽な役職で、暇な時に学校の飼育エリアに行って、鶏や兎が死んでいないか確認し、生きていれば餌をやるだけだった。しかしこんな楽な役職でさえ、北原秀次は一度も行ったことがなく、学校の飼育エリアがどこにあるかさえ聞いたことがなかった!
日本は強者を尊ぶ文化体系で、強者が優遇されるのは当然のことだった。他の人が忙しく働いている中、彼が座って勉強していても誰も文句を言わなかった。強者(偽)としての北原秀次もこの目に見えない特権に徐々に慣れ、むしろ快適に感じ、学習への意欲がさらに高まった。
「よう!」内田雄馬も来た。バックパックを机の横に掛け、北原秀次に挨拶した。北原秀次は顔を上げずに、さりげなく尋ねた。「怪我は大丈夫か?」
内田雄馬は笑って言った。「大丈夫だよ。阿律はまだ来てないの?」
「見てないな。」
内田雄馬は北原秀次が問題を解くのに忙しそうなのを見て、邪魔をせずに他の人を探しに行った。北原秀次が顔を上げて彼を見ると、中学時代に福泽冬美と同じ学校だった人を探して回っているのが分かった。おそらく情報収集をしているのだろう。
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