第171章 良い夫の素質_2

「体調は大丈夫なの？」

「大丈夫、ただ...ただすごく寒いの」彼女の声は少し震えていたが、それでも笑顔を浮かべていた。

北原秀次はため息をついた。この鈴木希は富豪の家に生まれたからいいものの、もし貧困家庭に生まれていたら、あの体で家族全員を疲れ果てさせていただろう。

しかし、鈴木希だけを責めることはできない。この下水道は確かに異常に湿気が多く寒かった。地上とは全く違う環境だった。彼は足を速め、言った。「もう少しの辛抱だ。すぐに出られるはずだ」

「はい！」鈴木希は素直に返事をしたが、すぐに歯が震えて音を立て始め、北原秀次の首に回した腕も冷たく、体の震えはさらに激しくなった。

彼女は体つきがあまり良くなく、平らで、全身骨ばかりで肉がなく、北原秀次の背中を痛くするほどだった。

北原秀次は足を止め、少し躊躇した。鈴木希はそれを敏感に察知し、震えながら軽く笑って尋ねた。「優しい人、私を温めてあげようと思ってるの？」

北原秀次は確かに彼女の体温が下がりすぎて他の問題が起きることを心配していたが、まだ9月上旬で、厳密に言えば夏も終わっていないのに、自分の身に着けているのは破れてボロボロで血で汚れたシャツ一枚だけで、これを鈴木希に渡しても意味がない。体温で温めてあげるにしても、男女の違いがあるので、躊躇していた。

鈴木希は彼の考えていることを察したかのように、大らかに言った。「今だってあなたの手は私のお尻に触れてるでしょう。もう十分触れてるんだから、抱きしめてくれても構わないわ」

「それは太もも...」北原秀次は反論しかけたが、言葉を途中で止めた。確かに鈴木希を背負っているので、彼女が落ちないように太ももを支えなければならなかったが、女の子の太ももとお尻は似たようなもので、どちらも触れてはいけない場所だった。

彼はもう躊躇せず、鈴木希を降ろして強く抱きしめた。まずは体温を回復させてから歩こうと思った―彼は良心に恥じることはなかった。溺れる者には手を差し伸べるべきで、人命救助が第一だ。決して下心があったわけではない。

これは確かに効果があった。鈴木希は彼の腕の中でしばらく震えていたが、次第に落ち着き、手足の感覚が戻ってきた。顔を上げて彼を見つめ、にっこりと笑って言った。「あなた、本当に優しい人ね」