第43章 ペラップの突然のしんか！（2更）

光彦の質問に対して、シェドゥは落ち着いていた。いや、むしろ無表情で、つまり...無視していた。

「おい、答えろよ！」光彦は大声で叫んだ。

光彦が余計なお節介を焼くわけではない。一日の観察を通じて、光彦はハリケンと彼の契約獣の才能を高く評価していた。彼自身は一時的にハリケンの教官であり、ハリケンが「邪道に走る」のを見過ごすわけにはいかなかった。

シェドゥはお茶を一口飲んで、ようやく口を開いた。

「ハリケンの修練リソースは全て学院が提供している。学院の支援があれば、ハリケンがより多くの契約獣を育成することは問題ない」シェドゥの口調は平坦で、感情の起伏は全くなく、まるで自分とは無関係な事実を述べているかのようだった。

しかし光彦は、シェドゥの言葉の中に金持ちの余裕を感じ取った！

確かに、多くの契約獣を同時に育成する召喚士は存在し、成功例もある。しかし、それには召喚士の才能に高い要求があり、同時にリソースの支援にも更に高い要求がある！普通の人はそんな冒険はしない。パンツを売っても足りないかもしれないのだ。

シェドゥの言葉から、光彦には、クラウドシティアカデミーがリソースを投入してハリケンを育て上げようとしているのが分かった！

まさに...お金持ちに頭が下がる！

しかし、なぜクラウドシティアカデミーはハリケンをこれほど優遇するのだろう？ダブルエンブレム使の潜在能力があるとしても、こんなに特別扱いされるはずがない。

待てよ！

光彦は突然ある噂を思い出した—ハリケンはアンディの実の息子だ！

そして、ハリケンの父親も普通の人ではないかもしれない！

真相が分かった！

光彦は怪しげな目でシェドゥを見た。絶対にハリケンに便宜を図っているんだろう！

しかし、契約獣の育成は、単なるリソースの蓄積だけでは済まない。

「ハリケンの精神力で、そんなに多くの契約獣を育成できるのか？」光彦は依然として眉をひそめていた。

召喚士自身が力不足なら、どれだけ大量のリソースを与えても、無駄になるだけだ。

「できる。ハリケンの精神力は普通の子供をはるかに超えている。そして、彼自身の資質も悪くない。これも学院がハリケンの状況にあまり介入しない理由だ。また、ハリケンは同時に多くの契約獣を育成することのデメリットを理解してから、しばらく新しい契約獣と契約していない」シェドゥは説明した。

「待って、その言い方だと、ハリケンの契約獣は彼が自分で契約したものなのか？あなたたちが選んで契約させたわけではない？」光彦は少し呆然とした。

ハリケンがこれほど多くの契約獣と契約できたのは、外部からの助けがあったからだと光彦はずっと思っていた。どうやらそうではないようだ。

シェドゥはうなずいた。

「ハリケンは異世界の魔獣と契約できる。彼の現在の契約獣は全て紋章内の通路を通じて契約したものだ。信じられないかもしれないが、ハリケンはたった一晩でこれだけの契約獣と契約した。我々も止めることができず、気付いた時にはもうこうなっていた」

「...」光彦は目を丸くした。

たった一晩で？十数匹の異世界の魔獣と交渉して契約に成功した？

まさか伝説の「王の覇気」があるのか？パンツ一枚で万獣を従えるとは？

異世界との繋がりを持つ召喚士にとって、異世界の魔獣との契約は簡単なことではない。

まず、紋章内の異世界への通路を開くのは簡単ではない。次に、開いたとしても、異世界の魔獣を説得して契約を結ぶことができる保証はない。

召喚士は意識を通じてのみ異世界の魔獣と交信できる。異世界の魔獣についての知識不足に加え、言語の壁もあり、異世界の魔獣を一匹でも説得するのは本当に難しい！

まさに盲目の猫が死んだネズミに出会うようなもので、運次第だ。

光彦は頭をかきながらため息をついた。

「分かった。この期間はハリケンを真剣に指導するよ。でも、もう一つ疑問がある。ハリケンはすでにチームを作っているのに、なぜ契約獣たちとコミュニケーションを取っている様子が全く見られないんだ？それに、彼の戦闘スタイルを見ていると、殺戮の訓練を受けているようだが」

シェドゥは相変わらず平然としていた。

「ハリケンは啓蒙教育から殺戮性質の修練を受けているからだ」

「なぜだ？」光彦は少し驚いた。この中に何か秘密があるのだろうか？

「私が学院からハリケンに割り当てられた啓蒙指導者だからだ。私は殺戮性質の修練方式しか知らないし、召喚士が契約獣とどうコミュニケーションを取るべきかも教えられない。これが私がハリケンを学生たちと一緒に訓練させている理由だ」

光彦は再び目を丸くした。

「お前は...一体何者なんだ？」

こんな人物に子供の啓蒙教育をさせて本当に大丈夫なのか？

...

レストランの中で、他の教官たちは急いで夜食を済ませていた。

ゲバスは鶏の骨を口にくわえながら、壁の石英時計を見た。

午前一時ちょうど。

「ぺっ！」ゲバスは口の中の鶏の骨を吐き出し、他の教官たちを見た。他の教官たちも不気味な笑みを浮かべてゲバスを見返していた。光彦もその中にいて、シェドゥは遠くのテーブルでお茶を飲んでいた。

「同志たちよ、時間だ。これから、あの小さな奴らに用意した最初の贈り物を届けようじゃないか！」

「へへへ...」

「がががっ...」

「けけけっ...」

食堂に不気味な笑い声が響き渡り、背筋が凍るような雰囲気が漂った。

...

ハリケンは別荘の屋根で横たわり、月光を浴びていた。

突然、振動が伝わってきて、ハリケンは眉をひそめ、目を開けた。

傍らのフシギバナはすでに立ち上がり、警戒して周りを見回していた。

「どうしたんだ？地震か？」

ハリケンは屋根から下を覗き込み、別荘の範囲全体が揺れ始めているのに気付いた。

振動のため、別荘の後ろで休んでいた精霊たちも一斉に目を覚まし、自分たちの住処から飛び出してきた。別荘の後ろに住む他の召喚士の契約獣たちも飛び出してきて、別荘に向かって走り、自分の主人を探しに行った。パニックになって何をすべきか分からない契約獣たちも、大軍団について走り出した。

全ての契約獣が別荘内に住むのに適しているわけではない。体が大きすぎたり、他の理由で、召喚士が契約獣を紋章内に入れたくない場合は、別荘の後ろに用意された快適な住居で生活させることを選ぶのだ。

「ここだ！」ハリケンは大声で叫んだ。

精霊たちは方向を定め、ハリケンの元へ走ってきた。

「戻っておいで、みんな」ハリケンは手を上げて精霊たちを収納した。

何か起こった時、召喚士が全ての契約獣を自分の元に呼び戻すのは基本的な素養だ。

召喚士が契約獣を呼び戻せる距離には制限がある。一般的に、見習い召喚士が契約獣を呼び戻せる限界距離は約五十メートルで、実力が上がるにつれて、距離も相応に倍増する。

別荘の高さは限界距離を超えていなかった。

絶え間なく揺れる別荘を感じながら、ハリケンは身をかがめて体を安定させようとした。

フシギバナはツタのムチを一本伸ばし、ハリケンの腰に巻き付けた。フシギバナ自身は重心が低いため、安定して立っていられた。

「ありがとう、フシギバナ。そうだ、ペラップ！」

ハリケンは突然、別荘の前で自由に走り回っていたペラップをまだ収納していないことを思い出した。さっきは別荘の後ろの精霊たちだけを収納して、ペラップを忘れていたのだ。

ハリケンは急いで別荘の前を見たが、目に入ったのはペラップではなく、まばゆい白い光だった！

「これは...進化の光？ペラップが進化した？待て、ペラップが進化すると...」

その時、まるで全世界の悪意を含んだような悪臭が押し寄せてきた。

一瞬、ハリケンは天国の門が自分に向かって開かれるのを見たような気がした。