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104章 にんじんボール_2

彼女は鴨のように座り、視線は虚ろで、焦点なく北原秀次を見つめていた。そして彼女の愛らしい三日月のような瞳の中に、徐々に輝きが溢れ、静かに二筋の涙が流れ落ちた。小さい顔にも苦しみが浮かんだ。彼女は突然頭を抱えて床に顔を伏せて泣き出した。「どうすればいいのかわからない!母さんもいないし、父さんも病気だし、家にはお金もほとんどない、わたし、どうすれば……」

彼女はそこに座り、苦痛と困惑に満ちた声で泣き続けた。

北原秀次は驚いて、反射的に彼女を起こし、その背をゆっくりと撫でながら、何を言っていいのかわからなかった。そして冬美も確かにこれ以上は耐えられない、と感じていた──父親が倒れて、妹たちの前で、彼女は必ず決断しなければならない。弱さを見せることはできない。

彼女が少しでも弱音をはくと、弟や妹たちは恐怖に突き落とされる。彼女は一人になった時だけ、自分自身から少し暖かさを取り戻せる。

彼女はまだ16歳だけど、母親が亡くなってから家のことを2年間も任されてきた。多少の社会経験はあるかもしれないが、これまでの経験とは比べものにならない大打撃に直面した時、心が紙のように脆くなってしまっている。

父親は病気で、母親は逝去し、四人の妹と一人の弟は全て彼女に頼っている。でも彼女が何を出来るんだろう?彼女は誰に助けを求められるのだろうか?

彼女にできることは、強がりを装うことくらいなのだろうか?

彼女はまるで卵のようだ。見かけ上は固い殻が粉々になり、中の白身と黄身は一瞬でドロドロになった。北原秀次に惨めな姿を見られても怒る気力すらなく、ただそこにへたり込み、大声で泣き始めた。「母さんが家族を私に託したけど、今の私はどうやって母さんに説明すればいいの……私はどうすればいいの?もし、父さんが気付かなかったら、私はどうすればいい?」

すでに自己責任にさいなまれていて、自分が何もできないことを何とも言えず憎んでいた。北原秀次が出て行った後、ひとりで丸くなって深く悲しんでいたとき、あの人が戻ってきて、何をすべきかを問うなんて……。

彼女が何をすべきかなんて、どうやって知るの!?

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