「チリンチリン!」
陸野は寝ぼけ眼をこすりながら、天井を見つめ、長い欠伸をした。
「平凡な一日がまた始まった。」
週末の真っ只中、ベッドのとなりにあるピカチュウの目覚まし時計は12時を指していたが、陸野はそれに気づくまで寝ていた。
洗面所に行き、水を出す間に、スマホで外食デリバリーを頼んだ。
「ピジョン急配、ポケモンフィッシュ... ふむ、最近の店の名前はますますユニークになっているな。」
新規オープンしたいくつかの店はポケモンという名前が付いていて、陸野にはとても親しみが湧いた。
ほら、ワードワンと言えばこれぞ(戦術加速)!
陸野はそれ以上考えず、「29.9元ネギガモセット(おまけで饅頭)」を選んでスマホを横に置き、洗顔を始めた。
「わらわら…」
顔に水をかける。
鏡に映ったのは、スリムで整った顔立ちの古典的な美少年であった。
少年の髪は乱れており、目の下には太いクマがあり、その目はより深みが増していた。
美しい顔の持ち主である彼は、それが自然もののクマに見えてしまうと思わず感嘆した。
まさに代入感が溢れる。
洗顔が終わった後、陸野は部屋に戻り、ゲーミングチェアにリラックスして座った。
コンピュータを開くと、パスワード「樱岛麻衣」を入力し、ピカチュウのスクリーンセーバーが点灯した。
「ぴかちゅう(◍'꒳'◍)〜⚡!」
陸野はBilibiliを開いて、今日の食事に合わせる動画を探し始めた。
魔都大学の一年生であり、BilibiliのゲームエリアのUP主と兼業している。
陸野はBilibiliでポケモンバトルの編集と解説を主として活動している。
独自のスタイルと専門知識で、10万人近いファンを獲得した。
陸野本人もゲーム対戦の上級プレーヤーであり、過去には世界7位の順位まで上がったこともある。
しかし、運が非常に悪く、「水ホース3連ミス」という有名なシーンもあった。
これが、陸野が視聴者から「飯テロ」とからかわれる理由だった。
配信しながらビデオを作る-
だから、彼は学校の外で部屋を借り、授業がある時だけキャンパスに通っていた。
「え?」
陸野はホームページで、つぶやいた。「ホームページにこんなにポケモンが関連する内容が推薦されている??」
「ポケモンの人気がまた上がってきている?」
ホームページに推薦された10のビデオ、そのうちの8つはすべてポケモン関連だった。
【ベル・ゲルリス:見てください、野生のみどり毛虫を発見しました】
【Water Bounceに変更しましょう】
【これは:兄弟のフルーツの木が熟しているので、少し山に登ってみます】
…
「今日のホームページの内容はちょっとおかしいな…」
「緑色の毛虫ってなんだ?プロテインは牛肉の6倍だって?」
「それにフルーツって、オレンジとか、文柚果とかそんなものじゃないだろうな…」
陸野は頭をかきむしり、戸惑いつつもゲームエリアに移り、びっくりして目を大きく開いた。
昨夜アップロードした対戦動画が、なんといきなりゲームエリアがトップになっている!
陸野は唾を飲み込み、【ルーチャンス戦術03:かわりばんどく】という動画をクリックした。
深呼吸する。
「再生数… 120万?!」
DNMD、俺破れる!
「対戦方法通知書。」
「学んだ。ジムリーダーに挑戦するぞ。」
「お願いだから、人間になってくれ!」
しばらく茫然として、陸野は弾幕を楽しげに眺めつつ、心の中で疑問を感じていた。
「かわりばんどく」という戦術は基本的なもので、どうして突然これほど話題になったのだろうか?
もしかしてどこかのゲームエリアの大御所が私の動画を上げてくれたのだろうか?
でも最近あんまりピカチュウ取引してないよなー。
顎をかきながら、陸はコメントセクションまでスクロールした。
コメントセクションの中に、「戦闘の人」というIDの6段認証アカウントが、「替わりばんどく」戦術を詳細に解説していた。
【戦闘の人:"替わりばんどく"とは、「どくどく」「スタンドイン」「みをまもる」という3つの技を持つポケモンそして、その戦術の核心に据えるということです。
バトルでは、トレーナーは非常に高い状況判断能力を持ち、この戦術をうまく使いこなしています。
この戦術に関しては、UPさんがすでに非常に詳しく説明しています。
草と毒タイプトレーナーは自然の優位性を持ち、このチュートリアルに従って真剣に学ぶことができます。
以上、非常に高いクオリティのチュートリアルを持ってきてくれたUPさんに感謝します!
PS:どうやら間違ってセクションを投稿したようですね。対戦エリアに投稿する方がいいと思います。】
この長いコメントを読んで、陸の頭には大きな疑問符が現れた。
対戦エリアって何?
Bilibiliはいつから「対戦」っていうカテゴリを始めたんだ?
下の返信には、「マスターボールでキャッチ」、「まじか、本物だ!」、「赤宝、ママはあなたを愛してる!」などがある。
頭をかきながら、陸は「戦闘の人」のコメントにいいねして、ついでに彼のホームページを開いた。
一瞬のうちに、陸の額から冷や汗が流れ落ちた。
「対戦エリアで有名なUP主、第9回シリカ大会チャンピオン、世界大会マスターチャンピオン……」
陸はどもりながら、上手く話せなかった。
「赤い、赤い!?」
「冗談だろ!赤いは特別編集では戦闘の人だったはずだ!BilibiliのUPの所有者になりました!」
赤いの写真集を開くと、20歳くらいの、笑顔が陽気な青年が。
赤いキャップをかぶっていて、上半身には黒い背中と赤いベスト。肩にはふわふわのピカチュウがいた。
もしCOSだとしたら、陸が思っていた赤いよりも、似ている度合いが10倍以上だ!
そして、この現実版のピカチュウは、とてもかわいい。まるで「ポケモン名探偵」の中のものとそっくりだ!
陸は完全に呆然とした。
「何事にもまず冷静に、冷静に!」
「今朝、起きて、突然私のビデオがバズって、コメント欄に大物が現れるという話だ」
「大物は世界チャンピオンで、ポケモンの世界の主人公、赤いポケットモンスター」
「は!このように分析すれば、何もかも明確になります!」
「……何も明確にならない!」
「結局、私がタイムスリップしたのか、それともこの世界がおかしいのか?」
「もしや世界線が収束し、赤いがUP主になっているのか!?」
陸はプロフェッショナルに訓練されており、どんなに馬鹿げたことでも受け入れることができる。
だけどこれは……。
陸の脳がクラッシュしようとしているとき、電話が鳴った。
「こんにちは、あなたの出前が届きました。窓際まで取りに来てください」
「あ、はい」
陸が窓際に行くと、突然6階だということを思い出した。
6階で窓端まで取りに来てもらおうって、ビーバードで料理を届けるつもりか!?
突如、黒影が横切り、羽毛が鮮やかで冠毛がなんとも気品に溢れる大きな鳥が窓の外に現れ、長いくちばしで包装袋をくわえながら、ニコニコと陸に羽ばたきを振った。
陸は呆然としていた。
出前配達員がビルの下で大声で叫んでいた。
「評価にご協力をお願いします、お願いします!」
陸はどのようにしてビーバードの口から出前を受け取ったかは覚えていない。
彼が覚えているのは、窓の外に空に浮かぶ多くのポリゴン、花壇でぐらつくとう、マージェランマグマのスリムな姿が通りすがり、
彼の家主がオレンジ色の毛と黒いストライプのカーディ犬を連れてアパートの中を歩いていて、ニコニコしながら陸に手を振ったことである。
「ポケモンの世界と現実が、融合……」
陸はぼんやりとして、顔を上げて空を見上げ、目元が潤んでくるのが分かった。
18年、まさしく18年。
僕は、この日を待っていたんだ!