第69章 出ていけ！

5分後、夏若雪は服を着て出てきた。リビングにいる葉辰を見て何か言おうとした時、孫怡が朝食を持って帰ってきた。

孫怡は葉辰がここにいるとは思いもよらず、不思議そうに尋ねた。「あれ、葉辰、外に住んでるんじゃなかったの？こんな朝早くにアパートに何しに来たの？」

葉辰が説明しようとした時、夏若雪は素早く彼の口を手で塞ぎ、緊張した様子で言った。「この人、ノックもせずに入ってきて、私を起こしたのよ！」

そう言って、彼女は葉辰に小声で付け加えた。「昨夜のことは、誰にも言わないでね！さもないと...私...」

夏若雪は一瞬、どう脅せばいいのか分からなくなった。

葉辰は夏若雪の手を振り払い、孫怡から朝食を受け取って、真面目な顔で言った。「お腹が空いてて、朝食を食べてなかったから、ちょっと食べに来たんだ。」

孫怡は葉辰が直接食べ始めるのを見て、慌てて言った。「でも、これは夏社長の朝食なのに...」

夏若雪は葉辰に紳士的な態度が全くないのを見て、怒って鞄を手に取り、葉辰を睨みつけながら外に向かって歩き出した。「いいわ、会社で食べるから！」

孫怡は夏若雪が怒っているのを知っていた。しかも夏若雪は今回車も出していなかったし、家族と何か揉めているようだった。彼女は葉辰に二、三言言い残して、追いかけて出て行った。

「夏社長、待ってください。送ります。」

葉辰は当然、夏若雪のことなど気にしなかった。

朝食を済ませた後、葉辰は再びあの真っ黒な石を取り出し、その中に入ろうと試みた。今回は抵抗が少し減ったものの、完全に入ることはまだできなかった。

「修行を加速させないといけないようだな。」

丹鼎がなければ、湯臣一品に無数の薬材があっても、葉辰は丹薬を製造するつもりはなく、朱仁德の言っていたオークションを待つしかなかった。

それ以上考えるのをやめ、葉辰は目を閉じ、足を組んで座り、修行を始めた。

彼の周りには無数の真気が漂い、まるで仙人のようだった。

どれくらい時間が経ったか分からないが、携帯の着信音が葉辰の修行を中断させた。彼は目を開け、ゆっくりと濁った息を吐き出し、指を空中で握ると、その携帯は意思を持っているかのように、直接葉辰の手に飛んできた。

彼はちらりと見て、沈海華からの電話だと分かった。