webnovel

戸惑い

「美月、ここだ!」

僕は廊下の隅に隠れるように立って、手を振った。

噂の渦中にいる彼女を一目見て、明らかに動揺しているのがわかる。

「大丈夫?」と小声で尋ねると、美月は周囲を確認してから近づいてきた。

「どうしよう…見られたかもしれない…」

「落ち着いて。噂はすぐに消えるようにしないとね。」

僕は肩に手を置き、真剣な表情で続けた。

「まずは冷静に。何があっても、僕は味方だよ。」

美月は私の言葉に一瞬戸惑ったが、すぐに笑顔を浮かべた。

しかし目にはまだ不安の色が残っていた。

「ありがとう。でも、どうすれば…」 彼女は右手で髪をいじりながらため息をついた。

その仕草がどこか幼く感じられた。

「みんなにどう説明すればいいのか分からないんだ…」

突然、彼女の瞳が光った。まるで何かを思いついたようだった。

「そうだ!あの日、風が強かったから、ただ運よく玲奈ちゃんを助けられたって言えば…」

僕は頷きつつも心彼女の不安の葛藤を感じ取った。

美月が自分の能力を隠すことにどれだけ苦労しているのか、想像できた。

「それで誤魔化せるかもしれないけど、もしまた同じことが起きたら?」

美月は口を閉ざし、少しび周囲を見回した。

彼女の心臓の鼓動が伝わってくるようだった。

「分かった…。でも、今はその方法で行きたい。」

彼女は決意を固めたように頷いた。そして私の手を握りしめ、力強く言った。

「一緒に乗り越えよう。」

「もちろん、美月。どんな時も君の味方だよ。」 僕は彼女の手を握り返し、微笑んだ。

「でも、無理はしないで。秘密を守ることも大事だけど、自分を追い詰めすぎないようにね。何かあったら、僕に頼っていいから。」

彼女の目が少し潤んだように見えたが、すぐに笑顔を取り戻した。

 「それにしても、その風が強かった作戦、案外いいかもね。」

僕は軽く冗談を交えながら、彼女の肩を叩いた。

少しでも彼女の気持ちが軽くなればと思って。