カフェのドアを押すと、ドアについている真鍮の鈴が澄んだ音を立てた。北原秀次が入って見回してみると、店内には誰もいなかった。内装はセンスが良く、場所も悪くないのに。こんなに暇なのか?
誰かいないかと声をかけようとした時、隅のテーブルから誰かが顔を出し、細い手を振りながら優しく笑って言った。「北原君、こちらです。」
北原秀次が声のする方を見ると、なんと鈴木希だった。すぐに眉をしかめた。
鈴木希は彼が動かないのを見て、直接立ち上がって近づき、手を差し出して笑いながら尋ねた。「手紙は?」
北原秀次は手紙を光に透かして見てみると、確かに中身は空っぽだった。しかし、彼は手紙を丸めて捨てることはせず、鈴木希の手に渡して微笑んで言った。「手紙は届けました。用事がなければ、私は先に失礼します、鈴木さん。」
手紙を届けるのは口実で、自分を呼び出すのが本当の目的だった。これは怪しい、先に立ち去るのが賢明だ。後で決着をつけよう。
鈴木希は彼を引き止めなかったが、封筒を弾きながら微笑んで言った。「良かった、やっと私という'古い友達'を思い出してくれたのね...ねぇ、北原君、私があなたを一度自ら会いに来させることができたなら、二度目も三度目もできるわ。私たちはどちらもバカじゃないから、お互いの時間を節約した方がいいでしょう?」
北原秀次は足を止め、振り返って鈴木希を見た。彼女は頭を傾げて少し愛らしく北原秀次を見つめ返し、少女特有の魅力を三分の一ほど漂わせていた。この外見に騙されてはいけない、これは骨の髄まで相当強気な人物だ。前回、彼女とカフェで話すのを嫌がった時、どんな手を使ったのか、教師を使って自分をカフェに騙し出すことができた。かなりの強引さで、目的を達成するまで諦めない性格のようだ。
北原秀次は微笑んで言った。「それで、鈴木さんは私に何の用があるんですか?」
鈴木希が何をしたいのか聞いてみたかった。以前は大きな恨みもなかったはずだし、罠を仕掛けているようにも見えず、ただ単に話がしたいだけのようだった。
「まずは座りましょう。長く立っているのは疲れるわ。好きな席を選んでいいわ。今日はここは私たち二人だけのために開いているの。ちなみに、私は隅の席が好きなの。」
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