北原秀次と冬美は元の道っぽ戻り、福泽直隆の個人印を授权文書に押す準備をしていた。
日本は世界で唯一、印章が署名以上の信頼性を持つ国だと言えるだろう。家を買ったり、車を買ったり、遺産を相続したり、またクーラーの受け取りや出席のサイン、就業記録まで、全てに印章が必要だ。例えば、冬美が福泽直隆の印章を持っているだけで、福泽直隆の名義で何でもでき、それが全て法的に効力を持つ。福泽直隆本人が直接出てくる必要すらない。
このような「印章至上主義」は日本の特徴の一つと言えるだろう。詳しくいうと、多くの歴史的な理由や現実的な理由があり、例えば印章を発行する証明機関が公証人の役割を果たし、契約書の手続きを簡素化することができ、また代理人に業務を依頼するのが容易で、本人がわざわざ出向く必要が無く、社会の効率性を向上させる。
冬美は北原秀次を連れてまた家の壁を飛び越えて帰り、直ぐに自分の部屋で父親の私的な印章を取りに行った。しかし、無意識に冬美を追いかけていた北原秀次は、部屋のドアの外に閉め出された。冬美は北原秀次と一緒に家宝を探しに行くのは構わないが、自分の部屋に気軽に出入りすることは許さなかった。
これ以上この若者に利益を与えてはいけない。今回は自分に手を出さなかったが、一度行くと次回から誘惑にかられるだろう。夜間に自分の部屋に入ってくるかもしれない。
彼女は北原秀次に部屋の外で待つように言い、本棚の裏から隙間に置いてあった福泽直隆の全ての個人用印章を取り出した。個人印は一つだけというわけではない。平均的に、一人の成人が5つの個人印を持っていると言われており、一般的には結婚後、夫が妻に新しく全ての個人印をプレゼントするのが習慣である。なぜなら、姓が変わるからであり、それはやむを得ない。人をあげるんだから、印も買わなければいけない(かなり高価である)。
日本の私的な印章は、主として3つの大カテゴリーに分けられます:実印、預金印、認印。
実印は、政府に届け出て証明書を取得するもので、不動産の売買や会社の設立、住民登録の変更、大規模資産の移転などに使用されます。絶対に失くせないもので、非常に注意深く保管する必要があります。
Support your favorite authors and translators in webnovel.com