ただ、こんな事態になるとは思っていなかった。確かに彼も私立大福剣道部のメンバーではあるが、所詳メンバーの身分は形ばかりで、正直なところ剣道の試合が自分と関係あるとは思ってもみなかった。さらに、試合に参加するとなると5、6日もの時間が必要だ。その間、店を開けっ放しにできない。
彼は途端に困り果てた。他ならば、式島律が何か他の困難に直面しているならば、あるいは非行少年にいじめられ、脅迫されている場合でも、彼は頭を出して拳を振るうくらいは何とも思わない。しかし、今回の状況は……。夏休みの予定もすでにたててあり、遠出の予定はなかった。
彼は、どうにも手助けができず、困った様子で言った。「それはちょっと無理だな、阿律!僕がいないと、ここは誰も見てくれない。仕方ないから店を閉めなきゃならないよ。」更に彼は付け加えた。「それに、僕が行っても必ず勝つとは限らないんだ、これは……」
日本は、中国とは比較にならないかもしれないが、それでも人口が多い国であり、人口は1.27億人(現在では子供を産まない傾向があり1.26億人に減少)で、高校生の男子学生は数百万から数千万人いるかもしれない。公平公正に言って、何人かは天才がいるはずだろう。また、剣道の試合では弱者が強者を倒すことも珍しくない。だから、試合に出ても必ず賞を取るとは断言できない。
式島律は細心の注意を払っていた。早くも準備しており、貯蓄通帳を取り出してキッチンカウンターに置き、「これが私の全貯蓄です。北原君のこれからの損失を補償するために使います。店の損失も私が負担します。もし足りなければ、アルバイトで返します。」と述べた。
彼は、自分がこんな要求をするのは無礼極まりない、自分勝手で、非常に恥ずかしいことだと言い終えて、頭を重くキッチンカウンターに突き当てて動かなかった。彼は頭を抱えながら、頑丈なキッチンカウンターに向かってドンドンと頭を打ちつけ、その音でお客さんに話しかけていた冬美を引き寄せた。「何か問題あるの?」と彼女は驚いて尋ねた。
彼女は式島律と同じクラブチームの仲間で、式島律が北原秀次の怪しい友達であることも知っていた。しかし、それが自宅のキッチンカウンターで頭脳練習をする理由にはならないだろう!
Support your favorite authors and translators in webnovel.com