第172章 薬材と引き換えに人質を！

秦玉の突然の手は、誰も反応する暇もないほど素早かった！

しかし、秦玉の手が江宇の顔に当たろうとした瞬間、一本の手が伸びて、秦玉の手首を掴んだ。

振り返ると、韋明が秦玉の腕をしっかりと握っていた。

「秦さん、やめてください」韋明は秦玉に首を振った。

「秦玉、落ち着け」武おじさんまでもがそう諭した。

それに秦玉は眉をしかめた。

二人の態度から、この江宇が並の人物ではないことが明らかだった。

「俺を殴ろうとしたのか？」江宇は目を細めた。

「てめえ、俺を殴ろうとしたのか？俺が誰だか分かってんのか？」江宇は冷たく言った。

秦玉は江宇を無視し、韋明を見て言った。「一体どういうことだ」

しかし韋明は秦玉を引っ張りながら言った。「とにかく薬材は補填しますから、もう追及しないでください」

「いや」秦玉は韋明の束縛を振り払った。

彼は楊老者の方を向いて言った。「楊老者、本当のことを話してください」

楊老者は非常に悩ましげな表情を浮かべ、話そうとしたが、躊躇っているようだった。

秦玉は深く息を吸い込んで言った。「すべての責任は私が負います」

その時、江宇は高笑いをして言った。「知りたいのか？よし、じゃあ俺が教えてやろう！」

「お前の九龍丹が気に入ったから、普通の薬参と強引に交換した。それがどうかしたのか？」江宇は淡々と言った。

「やはりそうか」秦玉は理解した。

彼は韋明を見て、さらに楊老者を一瞥し、重々しく言った。「ご好意は感謝します。しかし、紙で火は包めません」

事態は既に韋明のコントロールを遥かに超えていた。

「もういい、秦玉、やめておけ」武おじさんは秦玉の腕を引っ張った。

傍らの江宇は嘲笑って言った。「見ただろう？お前の周りの連中は必死に止めようとしている。なぜなら、江家を敵に回すとどうなるか、みんな分かっているからだ」

秦玉は冷たく江宇を見つめ、言った。「お前を敵に回すと、どうなるんだ？」

江宇は一瞬驚き、眉をひそめて言った。「俺を挑発しているのか？」

秦玉はその言葉を無視し、繰り返した。「聞いているんだ。お前を敵に回すと、どうなる？」

江宇は怒りを覚えたようで、冷たい表情で言った。「俺を敵に回すということは、江家を敵に回すということだ。江家を敵に回せば、お前は楚州で生きていけなくなる！」