第389章 託付
「ヒルテ……準男爵、お食事の用意ができました」
アイリンはドアを開け、ぎこちなく礼をし、明らかに緊張した声で言った。フィリンは妻がこのような態度を見せるのは初めてで、王子の前でさえこれほど緊張することはなかった。
「父上？」彼は戻ってきてから沈黙を続けている準男爵に向かって、そっと尋ねた。
「ああ……」準男爵は目を瞬かせ、深い思考から目覚めたかのようだった。「先に食事をしよう」
小さなテーブルに並べられた料理は特別豪華で、妻が露店市場まで足を運んだことが一目で分かった。彼はアイリンに励ますような笑顔を向け、いつものようにパンを切り分け始め、大きな料理を四等分した——彼ら三人の他に、アイリンの友人のメイがいた。
帰宅した時、メイはアイリンとドラマの内容について話し合っていた。父親を二人に紹介した後、多くの人ならこの時点で帰るところだが、メイはそうしなかった。彼女はただ眉を少し上げ、簡単な礼をした後、ずっとアイリンの傍にいて、珍しく自ら夕食に残ることを申し出た。
これには彼も本当に戸惑った——以前、彼女に感謝の意を示そうと特別に晩餐に招待した時でさえ、承諾してくれなかったのに。
しかし払暁の光は今、そんなことを気にしている場合ではなかった。表面上は落ち着いているように見えても、心の中は同じように混乱していた。一つは父が妻をどう思うかという心配、もう一つは魔女アエゴサの態度だった。父の物思いに沈んだ表情を見れば、この家族の当主が明らかにこの件を重要視していることが分かった。しかし、自分も慰め方が分からず、数年の断絶と距離感がこの隔たりをさらに深めていた。結局、黙々と食事を続けるしかなかった。
幸いにもメイ嬢がいてくれた。
彼女のドラマに関する話題が父の興味を引き、その後、王都の風情や貴族の生活について準男爵と楽しく会話を交わし、この夕食がようやく重苦しさを感じさせなくなった。さらに、新しいドラマについての議論では、アイリンも時々話に加わることができ、父は彼女の公演の近況まで直接尋ねてくれた。これにフィリンは密かにほっと胸をなでおろした。
夕食後、メイは帰ると言い出した。
妻と一緒に食器を片付けた後、準男爵は彼を書斎に呼んだ。
「お前の妻はいい友人を持ったな」
「メイ嬢のことですか？」フィリンは少し驚いて、「確かに彼女は稀に見る優れた女優で、ドラマの面でアイリンに大きな助けとなっています。前回の要塞での公演も彼女のおかげで——」
「いや、演技のことではない」ヒルテは感慨深げに言った。「気付かなかったのか？彼女はさっきずっと私に対して牽制していたんだ」
「牽制……ですか？」フィリンは目を丸くした。二人は食卓で楽しく話していたではないか？
「はははは……」老人は思わず笑い出した。彼は首を振って、「お前は本当に貴族との付き合い方を知らないな。彼女が語った王都での見聞は庶民の娘と貴族との交際にまつわる伝奇的な経験だし、ドラマの内容は『シンデレラ』だ。さらに上層部の政治について話す時も、殿下の領地回収政策の話だった。お前がアイリンと結ばれるために家族との関係を断ち切ったことを知っているに違いない。そうでなければ、あれほど私と対立するような発言ばかりするはずがない」
「そう……なんですか？」
ヒルテ準男爵は微笑んで、「地位や称号といった虚名を恐れるよりも、実際の行動の方が明らかに重要だ。彼女にそう言われて、アエゴサさんの件についても大体理解できた——先祖が嘘をついていたかどうかに関係なく、私たちは彼女が託したものを無傷で彼女の手に戻した。たとえ祖先アエゴサが私たちを受け入れたくないとしても、私たちは別の方法で彼女に仕えることができる」ここで彼は深いため息をついた。「本来なら私はこのような考えを信じていなかったが、お前とアイリンの生活を見て、突然、このような努力は無駄ではないかもしれないと思うようになった」
「ありがとうございます……」父の言葉に込められた承認の意味に、フィリンは思わず目頭が熱くなった。当時は断固として関係を断ち切ったものの、彼の心の中では依然としてこの結婚が家族に認められることを望んでいた。
しかし準男爵の次の言葉に、彼は一瞬その場で固まってしまった。
「ヒルテ家に戻ることは考えたことがあるか？」
「え？いいえ、私は……父上は……」払暁の光は頭の中で全く反応できず、口を開いたものの、何を答えればいいのか分からなかった。家族に戻る？なぜ父は突然このことを持ち出したのだろう？
老準男爵はゆっくりと言った。「当時の決定が間違いだったのなら、今挽回しても遅くはない」
しばらくして、フィリンはようやく躊躇いがちに口を開いた。「今の仕事は悪くないと思います。町での生活も——」
「長歌要塞の騎士として戻れとは言っていない」ヒルテは遮って言った。「私の言葉の意味が分かるはずだ」彼は一字一句はっきりと言った。「お前に家族を継いでほしいのだ」
払暁の光は唾を飲み込んだ。「弟は……」
「ミソ・シルトはよい後継者ではない」準男爵は包み隠さず言った。「彼は元々お前のように西境で名を馳せた騎士になりたがっていたが、公爵が敗れてから、方向性を見失ってしまった。敗者の家族として、新しい城主に忠誠を尽くすべきなのに、彼は他の四大家族と近づきすぎている。しかも私がどれだけ諭しても、彼の野心を抑えることができない。その理由は想像がつくだろう」
彼が次期当主になるからだ、とフィリンは考えた。自分は既に家族を離れ、ミソに継がせる以外に父には選択肢がない。これが何年ぶりにヒルテ邸に戻ったのに、冷たい目で見られた理由なのだろう。
「これは才能や学識とは関係ない。才能は育てることができ、学識は伝えることができる。しかし、適切な後継者は風向きを読む力を持っていなければならない」父は続けた。「ペイロ様はすでにローラン殿下の新政策を発表し、メイ嬢が要塞で上演した『新たな街』と合わせて考えると、彼はすぐにも西境を一つにまとめようとしているのではないかと疑っている。四大家族がこの変化を簡単に受け入れるかどうかはまだ分からないが、風向きは……穏やかではない。このような時こそ、静観するべきで、彼らの探り石として使われるべきではない」
フィリンもこれらの情報については耳にしていた。王子殿下は自身の意向や政策を決して隠さず、実施前に領民に宣伝することさえあった。その中には辺境町の正式な築城事業も含まれていた。
しかし彼は当主の争いに関わりたくなかった。たとえ父がそう言っても、ミソが簡単に諦めるはずがない。弟の性格について、フィリンは十分理解していた。
彼は最後に首を振った。「申し訳ありません、父上、私は——」
「今すぐ決断を下せとは言っていない」準男爵は手を振って言った。「私はまだ元気に生きているのだから、私が見ている限り、家族は道を外れることはない」彼の笑顔は少し老けて見えた。「もしミソがこれらを理解できれば、私もこれ以上何も言わない。ただ、もし家族が危機に瀕した時には、ヒルテ家を助けてほしい——私とお前の母の分として」
今回、フィリンは拒否の言葉を口にすることができなかった。
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