第156章 老人まで殴るのか？

秦玉はタクシーの中で横たわり、全身の力が抜け切っていた。

先ほど、彼は全力を振り絞ってようやくタクシーに這い上がることができた。

「奴を殺さなかったのは残念だ」秦玉の目は冷たく光った。

自分を害しようとする者に対して、秦玉は一片の慈悲も持たない。さもなければ、彼らはいつでも再度襲ってくる可能性があるのだから。

「まさか聖体術の消耗がこれほど大きいとは思わなかった。今後はなるべく使わないようにしないと」秦玉は心の中で思った。

車はようやくホテルに到着した。

長い車の旅にもかかわらず、秦玉の力はまだ回復していなかった。

仕方なく、秦玉はタクシー運転手に頼んでベッドまで背負って運んでもらった。

ベッドに横たわった秦玉は、不安を感じずにはいられなかった。

「明日までに回復できるだろうか」秦玉は重々しく言った。

明日は中医大会だ。もし体が回復しなければ、それは本当に厄介な問題となるだろう。

一方その頃。

洪武は家に帰ると、深い思考に沈んでいた。

彼には理解できなかった。一人の内勁大師がどうやってこれほどの階級差を超えて自分に勝てたのか。

この時の洪武の心中は複雑だった。

秦玉が聖体術を使って自分に勝ったことは明らかだった。

もし聖体術を使う前に殺意を持って攻撃していれば、秦玉には勝つチャンスなど全くなかったはずだ。

しかし、失敗したらどうなるか？もし秦玉を殺せなければ、将来必ず死地に追い込まれることになる。

あれこれ考えた末、洪武はついにこのリスクを冒さないことに決めた。

「惜しいことをした」洪武は霊芝を手に取りながら、少し心を痛めた。

せっかく手に入れた霊芝なのに、すぐに返さなければならないとは。

その頃、楊老者は韋家に連れて来られていた。

楊老者は表情を暗くし、心配で胸が一杯だった。

「韋若様、秦玉は...大丈夫でしょうか...」楊老者は韋明を見つめた。

韋明は口を開きかけたが、何も言わなかった。しかし、その表情が全てを物語っていた。

「内勁大師が洪武の手から逃れることは不可能です...」韋明はついにため息をついた。

「何か助ける方法はないのでしょうか...」楊老者は諦めきれずに尋ねた。

韋明は首を振り、言った。「洪武は古参の宗師です。韋家でさえも彼を敵に回したくはありません」