第75章 まさかまさか？

沈雲はすぐに更に怒りを覚えた。

魏江がまさか直接認めるとは思いもしなかった。少しも面子を立ててくれないなんて！

「魏江、やり過ぎだぞ！」沈雲は歯を食いしばった。

「楚州銀行なんかなくても、俺は生きていける！」沈雲は大声で叫び、踵を返した。

「待て」その時、魏江が沈雲を呼び止めた。

沈雲は心の中で喜んだ。まだ望みがあると思い、急いで振り返った。

しかし、魏江は机の上の贈り物を指差して言った。「お前の物を忘れているぞ」

これに沈雲は更に怒り、魏江を指差して言った。「覚えていろ！」

その言葉を残し、沈雲は部屋を飛び出した！

この光景を見て、秦玉は心の中で冷笑を浮かべた。

この沈雲は少しばかりの財力を頼りに、日頃から威張り散らし、一般人を草のように扱う。こういう人間はいずれ報いを受けるものだ。

彼が去った後、魏江は秦玉の方を向いて笑いながら言った。「秦さん、この契約書には全部で六十四箇所のサインが必要です。抜かりのないようにお願いします」

「ご安心を」秦玉は笑って答えた。

彼は二十分近くかけて、やっとこの契約書にサインを終えた。

契約書へのサインが終わると、魏江は黒い銀行カードを取り出した。

「このカードは楚州銀行のVIPカードです。このカードを持っていれば、永久に楚州銀行のVIP顧客となります」と魏江は説明した。

「このカードがあれば、ほとんどの高級店で特別待遇を受けられます。もちろん、楚州限定ですが」魏江は続けた。

秦玉はカードを手に取り、感慨深げだった。

数週間前まで、秦玉は何も持っていなかったのに、今では二百億円の銀行カードを持っている。

この天と地ほどの違いに、秦玉は現実感を失いそうになった。

「魏さん、用事がなければ、私はこれで失礼します」秦玉は立ち上がって言った。

魏江は頷いて言った。「はい、秦さん、何かありましたらいつでもご連絡ください」

楚州銀行を出ると、宋薇と李岩が入口で待っているのが見えた。

「秦玉！」宋薇は秦玉を見るなり、小走りで近づいてきた。

李岩は気まずそうに秦玉の前に来て、照れ笑いを浮かべながら言った。「秦さん、以前は失礼いたしました。どうかお許しください」

秦玉は李岩を一瞥し、笑いながら首を振った。

この李岩は口は悪いが、人柄は悪くない。いつも従妹のことを守り、利益に目が眩まないでいる。