江北大学の男子寮E2棟。
空気は極めて重苦しかった。
内外に何重もの人だかりができていた。ほとんどが騒ぎを聞きつけて集まった学生たちだ。
皆、無表情な顔をしていた。
人だかりの中央。
張おばさんは怪我をした汪宇恒を抱きしめながら、花壇の縁に座り、震えていた。
彼女の胸は痛んでいた!
汪宇恒は彼女の誇りだった。幼い頃から成績優秀で、思いやりがあり、やっと江城一の大学に合格したというのに、大学で腕を折られてしまうなんて!
問題なのは、この畜生どもが権力を持っていて、学校とも結託し、救急車を呼んでも無駄だったことだ!
情報は完全に封鎖されていた!
何という因果なのか!
汪おじさんは棒を手に持ち、汪宇恒と妻の前に立ちはだかり、頑固な体で母子を守っていた!
そして彼の前には数人が立っていた。
先頭に立っているのは、ブランドのカジュアルウェアを着た若者で、その目には傲慢さが満ちており、抱きしめている女性はかなりセクシーな体つきをしていた。
どうやら、カップルのようだ。
傲慢な若者の傍らには、二人の屈強な男が立っていた。スキンヘッドで、筋肉が盛り上がっており、かなり恐ろしい雰囲気を醸し出していた。
それ以外にも、若者の後ろには太鼓腹の中年男性が数人おり、おそらく学校の幹部だろう。
学校幹部は腰を曲げ、時折傲慢な若者に何か話しかけ、笑みを浮かべていた。
傲慢な若者は汪宇恒に視線を向け、冷笑しながら言った。「汪宇恒、誰を連れてきたのかと思ったら、このジジババか。」
汪宇恒の目から火花が散ったが、立ち上がろうとした彼を張おばさんが押さえつけた!
「余承東、もう一度俺の親を侮辱してみろ!」
明らかに、傲慢な若者は余承東という名前だった。
汪宇恒にとって、誰も両親を侮辱することは許されなかった!両親が朝早くから夜遅くまで学費を稼いでくれなければ、大学に通うことすらできなかったのだ!
裕福な家庭に生まれたわけではないが、こんな両親がいることを幸せに思っていた!
長年、彼は一生懸命勉強し、江北大学に入学したのは、出世するためだった!
しかし今日の江北大学は彼の心を完全に凍らせた!
名だたる学校幹部が、裕福な家庭の学生に媚びを売るなんて!
何という世の中だ!
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