放課後の校庭、響き渡る歓声と雷鳴が交錯する中で、少女の秘密が暴かれる危機が訪れる。平凡な日常を送っていた桜咲美月は、その日突然、目の前で新たな運命に引き込まれる。誰にも知られてはならない「力」を持つ彼女は、仲間たちと共に謎の声の正体を追うことに――。 優しさと恐怖が混ざり合う囁き、迫り来る影、そして試される絆。美月は自らの能力とどう向き合い、大切な人々を守るのか? 青春とミステリーが交差する物語が、今幕を開ける。
放課後の校庭で、バスケットボール部の試合が行われていた。
美月は友人たちと応援席で笑顔で声援を送っていたが、その時、突然空が暗くなり始めた。
黒い雲が急速に広がり、激しい雷雨が迫っている。
「急いで屋内に避難しよう!」友人が叫ぶ。
しかし、その瞬間、グラウンドの中央に一人の少女が立ち尽くしているのが目に入った。
彼女は新入生の玲奈で、足をくじいて動けなくなっているようだ。
「玲奈ちゃんがまだあそこに!」美月は焦りを感じた。周囲はパニックになり、誰も彼女に気づいていない。
雷が轟き、雨が激しく降り始めた。
「このままじゃ危ない…」
美月は心の中で葛藤した。
自分の超能力を使えば、玲奈を救うことができる。
しかし、それをすれば自分の秘密が明らかになってしまうかもしれない。 一瞬の決断で、美月は走り出した。
人間の速度を超えるスピードで玲奈の元へと向かう。周囲の時間がスローモーションのように感じられる中、彼女は玲奈を抱きかかえ、安全な場所へと移動させた。
その瞬間を目撃した数人の生徒が、驚いた表情で美月を見つめていた。
「今の、見た?」一人が呟く。
「美月先輩、まるで風のように…」
心臓が激しく鼓動する。
美月は動揺を隠しながら、
「大丈夫?玲奈ちゃん、怪我はない?」と優しく声をかけた。
玲奈は涙を浮かべて「ありがとうございます、美月先輩。でも、今どうやって…?」と不思議そうに尋ねる。
「えっと、アドレナリンが出たのかな?」美月は苦笑いを浮かべ、誤魔化そうとする。
しかし、周囲の視線が鋭くなっているのを感じた。
その後、美月は急用があると言ってその場を離れた。心の中で「どうしよう、今のを見られてしまった…」と不安が募る。
秘密を守るために、これからどうすればいいのか、彼女の悩みは深まるばかりだった。
学校中で噂が広まり始める。「桜咲美月は何か特別な力を持っているんじゃないか?」友人たちの間でも話題になり、美月は追い詰められていく。
教室の窓から外を眺めながら、美月は決意する。
「もう一度、自分の力と向き合わなければならない。大切な人たちを守るために。」
この出来事をきっかけに、美月の人生は大きく動き出す。
秘密を守りつつ、自分の力をどう活かすべきか。彼女の新たな挑戦が始まろうとしていた。