クラインが腕の屈伸動作を繰り返していると、ダンが体を傾けて守衛室の扉を押し開けた。
ダンの慎重さや異常なまでの警戒心、そして滑稽な「守りの動作」も相まって、クラインの神経は極度に張り詰めていた。まるで子供の頃に夜の墓地を通り抜けるあの感覚にそっくりだ。
レベル「2」の封印物は中危険度。慎重かつ一定の範囲内で利用可能……夜を統べる者の正式メンバーでさえその詳細を知ることはできない……どれほど危険なのだろうか……緊張の中で、クラインの頭にはさまざまな考えが駆け巡った。
その時、処理装置が突然停電に陥ったかのように、頭がにわかに麻痺した。
クラインは、視界に映るすべてがスローモーションになり、自分の腕を曲げる動作までもが遅く感じる。
ダンが足を止め、スローモーションでコマ送りのように自分のほうに近づいてきて、ゆっくりと手を差し出すと、自分の肩を押した。
その瞬間、さきほどの出来事が幻覚だったかのように、クラインの思考や視線は正常に戻った。
「何が起きたんですか?」クラインは呆然としつつ驚きの色を滲ませながら声を抑えて尋ねた。
ダンは首を横に振りながら、低い声で言った。
「よく観察するんだ。」
そう言うと、ダンは体の向きを変え、守衛室に入った。クラインもその後に続くと、室内には座ったり立ったりしている4人の姿があった。
そのうちの一人は「真夜中の詩人」レオナルドで、ほかの三人は面識がない。しかし、四人には共通点があった。それは「腕の屈伸運動」を少しも休むことなく繰り返しているということだ。
「クライン・モレッティだ。アンティゴノス家のノートに奇妙な感知がある。」ダンは簡単に紹介した。
そして、見知らぬ三人を指して言った。
「こちらは封印物『2—049』を運んできてくれたベークランド教区の同業者で、こちらは序列8の『盗掘者』であり射撃の名手でもあるロレッタ女史だ。」
すると、その30歳前後の黒髪の女性は愛想よくクラインに会釈した。
端正な見た目で、帽子は被っておらず、男物に似た洋服を着ている。黒のアウターに白いシャツ、黒いタイトな長ズボンと同色の革靴を身に着け、口角が少し上がっている。
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