葉辰の姿が消えた後、孫怡は手のひらにあるいわゆる丹薬をもう一度見つめ、捨てようと思ったが、なぜか手が引っ込んでしまった。
「この人、こんなもので人を騙し続けるつもりじゃないでしょうね。だめだわ、月曜日に会社で検査してもらおう。毒がなければいいけど、もし毒があったら、葉辰にこんなものを作るのを止めさせないと」
その後、孫怡はキッチンを少し片付けてから、ソファに座って今日の江城ビジネス新聞を読み始めた。
これは彼女が長年培ってきた習慣だった。
突然、彼女は今日の新聞の日付に目が留まり、何かを思い出したように呟いた。「もうすぐ葉家三人の命日ね。今年もきっと私一人でお参りに行くことになるわ。私は葉家とは何の関係もないけど、誰かがしなければならないことがある。江城のあの連中がやらないなら、私がやるしかないわ」
実は5年前の雲湖山荘での出来事の後、彼女は多くの人に会い、葉家が全滅した理由を明らかにしようとした。
しかし、誰一人として彼女に真実を話そうとはしなかった。まるで葉家に関わることを非常に恐れているかのように、全ての人が反応した。
彼女は葉辰の叔父にまで会いに行ったが、その人は真実を話すどころか、彼女を追い出してしまった!
5年の間に、彼女は調査を通じて、おおよその情報を得ることができた。
当時、葉辰の父親がある事件で京城の大物を怒らせ、その大物が激怒して葉辰の両親を殺したようだった。
葉辰については、東銭湖に転落して生死不明となった。
葉辰が落ちた場所を、彼女は見に行ったことがある。そこは急流で、落ちたら生きて帰れるはずがなかった。
「葉家は一体何の因果があったのかしら。立派な家族がこんな結末を迎えるなんて、はぁ!」孫怡は長いため息をついた。
……
翌日早朝、葉辰が大都マンションを出ると、マンションの入り口にメルセデスベンツのGクラスが停まっているのに気付いた。
以前、城北公園で見かけたものと全く同じだった。
Gクラスの横には少女が寄りかかっており、それは沈夢佳で、今まさに何かを焦りながら見渡していた。
今日の沈夢佳は帽子をかぶっておらず、墨のような黒髪が腰まで垂れ下がり、シンプルな白のワンピースを着て、まるで仙女のようだった。
高級車と美女、この二つが並ぶだけで、誰もが目を奪われるのに十分だった!
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