第293章 冷酷！（5更！）

道中。

葉辰はベントレーの後部座席で目を閉じていた。

かすかな気流が彼の周りを漂っていた。

朱雅はバックミラーから何度も葉辰を見つめ、彼が何を考えているのか分からなかった。

彼女は特別な身分を持ち、これまで誰かの運転手を務めたことはなかった。

今日はその初めての経験を葉辰に捧げることになった。

しかし、葉辰が後部座席に座っているだけで、彼女は心が安らぐのを感じた。

これが強者のオーラというものなのだろう。

「葉様、あと10分ほどで到着します」と朱雅は告げた。

「ああ」

朱雅の運転は非常に安定しており、急ブレーキをかけることもほとんどなく、葉辰は快適に感じていた。

突然、後ろから二台の轟音が響いてきた！

朱雅がバックミラーで確認すると、京A（北京ナンバー）の高級スポーツカーが二台、猛スピードで接近してきた！

赤と白の二台で、明らかにスピード競争をしていた！

ナンバープレートの数字に気付いた時、彼女の顔は青ざめた！

一台は京城の武道家族、落家の車だった！

もう一台は出所は不明だが、ナンバーから見て、背景は相当なものだと分かった！

この時間にこの二台が同じ道に現れたということは、薬盟からの招待を受けているに違いない。

問題は、この速度だ。命知らずとしか思えない。

ここは制限速度70キロなのに、彼らは明らかに180キロ近い速度を出している！

狂気の沙汰だ！

完全な狂人だ！

仕方なく、朱雅はベントレーを路肩に寄せようとハンドルを切った！

しかし、二台の車は朱雅を避ける気配もなく、突っ込んでくる！

本来一台しか通れない道を、無理やり並走しようとしている！

後ろからは狂ったようにクラクションを鳴らしている！

朱雅は顔を引き締め、スピードを上げるしかなかった！

選択の余地がなかった！さもなければ事故は避けられない！

しかし、二台のスポーツカーの速度はさらに速く、一台はベントレーの横をかすめて追い抜いていった！

ベントレーの側面から激しい火花が散った！

朱雅は完全に恐怖に襲われた！

しかもそれで終わりではなかった！

後ろの白いスポーツカーは、自分が遅れを取ったことで、明らかにベントレーを元凶と見なし、躊躇なくベントレーに突っ込んできた！

「ドン！」

車体が揺れた！