第47章 これはただのUSBメモリに過ぎない
「え？なぜそんなことを聞くの？」宋書航は疑問に思った。
「昨日の昼間、学校で誰かが『江南大学都市の宋書航さん』について情報を集めていたのを見かけたからよ。あなたのクラス、年齢、住所、それに親しい人物などの情報をほとんど調べていたわ。何か変だと感じたから、このことをメモしておいたの。そうそう、私は学校の報道部の部員よ」諸葛月は微笑みながら言った。
「私のことを調べている？」宋書航は驚いた。最近誰かを怒らせたりしただろうか？
薬師は誰かに尾行されていると言っていたが、おそらく自分が薬師と一緒にいるところを見られて、ついでに自分の情報も探られたのかもしれない。でも薬師が来たのは今朝だ！
それに、昨日の夕方にはヒーローのように数人の不良をやっつけたが、それは昨日の夕方の出来事で、昨日の昼間とは何の関係もないはずだ！
宋書航には心当たりが全くなかった。
「とにかく、最近は気をつけた方がいいわよ。誰かがあなたを恨んで待ち伏せしているかもしれないわ。これだけ言っておくわ。私は用事があるから先に行くわね。ご無事で」諸葛月はくすくす笑い、宋書航の肩を軽く叩いて、歌を口ずさみながら寮を出て行った。
「ありがとう」宋書航は返事をした。
誰かが待ち伏せしているなら、それほど怖くはない。しかし、相手は自分の情報だけでなく、周りの親しい友人の情報まで調べている。
それが少し不安だった。
とにかく...最近は用心するに越したことはない。
後で薬師の先輩が来たら、背後で調査している奴を見つける方法がないか聞いてみよう。薬師の先輩は尾行対策にはかなり詳しそうだ。
……
……
そう考えながら、宋書航は寝室に入った。
高某某は相変わらず死んだように横たわっていた。書航は心配して尋ねた。「高某某、大丈夫か？」
「書航、僕は汚されてしまった」高某某は呟いた。
「汚されたって言い方は極めて不適切だぞ。お前は古代の処女じゃないんだから、そんな気持ち悪い表現を使うな」宋書航は高某某を叩きながら、ついでに尋ねた。「そういえば、さっきの諸葛月って男なのか？」
高某某は顔色を変え、しばらくして苦々しく首を振った。「違う」
「じゃあ女の子か？死ねよお前！女の子にキスされただけで壊れたみたいな顔してんじゃねーよ！それってただの見栄じゃないか！」宋書航は力強く高某某を叩いた。「安心しろよ、俺は口が堅いから、絶対に今日のことを彼女に言わないからさ。突然の艶福だと思えばいいじゃないか？」
しかし、高某某の表情はさらに暗くなり、より苦しそうに首を振った。
「首を振るってどういう意味だ？まさか...諸葛月は女の子でもないのか？じゃあ何なんだ？まさか両性具有か人妖とかじゃないだろうな？」宋書航は困惑した。
「違う...どう言えばいいかな、この種のことは、君たちには理解できないよ」高某某は首を傾げ、この世に未練なさそうな様子だった。
こいつは、もう救いようがないな。
「まあいいや、そのまま死んだふりしてろよ」宋書航は高某某を叩いた。
そして彼は歌を口ずさみながらベランダに出て、空を見つめた。
飛剣伝書はどんな感じなんだろう？
……
……
高某某は生きるか死ぬかわからないような状態を十数分続けた後、無感覚に起き上がり、顔を洗った。「書航、土波が今夜一杯やりたいって言ってて、夜に陽德のところに集まろうって。どう？時間ある？」
宋書航は少し考えてから答えた。「問題ないよ。でも後で友達が物を取りに来るから、少し遅れるかも。六時頃には行けると思う！」
「じゃあ俺は先に行くよ。今日は...大酒を飲むつもりだ」高某某は泣きそうな顔で言った。
「千の憂いを酒で忘れる？」宋書航は笑った。
高某某は頷き、寮のドアを開けた。「じゃあ先に行くよ。早めに来てくれよ」
「はいはい、問題ない」
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
時間は一分一秒と過ぎていった。
宋書航は今の自分が「夫待ち石」そっくりだと感じた。空を見つめ続け、期待に胸を膨らませていた。
約二十分後、午後四時七分。
ようやく薬師から連絡があった。電話がかかってきた。「書航の小友よ、通玄大師の飛剣伝書が来るぞ。今からそちらに行くが、誰もいないか？」
「大丈夫です。同室友達は夜に飲みに行くので、今は私一人です」宋書航は素早く返事をした。
「待っていろ、すぐに行く」薬師は電話を切った。
二分後。
薬師は宋書航の元に到着した。
「来たぞ！」彼は笑った。
「私たちは何かしなければいけないんですか？」宋書航は尋ねた。「それとも、ここに座って待っているだけでいいんですか？」
「私に任せろ」薬師は再びベランダに出て、また空に向かって指を差し出した。二本の指が赤色に変わり、点滅し始めた。
宋書航は空を見つめていた。遠くの空に光が点滅し、薬師の方向に向かって素早く飛んでくるのが見えた。
その光は次第に近づき、速度は極めて速かった——剣のような物体がかすかに見えた。
「こんなに堂々と飛剣伝書をして、目くらましのような隠蔽工作もしないんですか？」宋書航は突然悟ったように思った——最近の年々で人々がよく撮影するUFOや空中の異常な飛行物は、修士たちの飛剣伝書か、あるいは単に剣術飛行なのではないだろうか？
修士たちのやり方は危険すぎる。今は科学技術がますます発達し、対空砲や阻止砲のような装置はどの国も配備している。もし対空砲などに撃ち落とされたらどうするのだろう？
宋書航が空想に耽っている間に、その飛剣はすでに薬師の傍らに降り立っていた。
それは鋭い黒鉄の小剣で、薬師の赤くなった指の上空に静かに浮かんでいた。いかなる力も借りずに浮遊し、これは完全に世界の物理法則に違反していた。
宋書航は非常に冷静だった。彼の世界観が完全に崩壊した日から、十八年間学んできた物理の知識はすでに半分以上捨て去られていた。もし物理法則が凡人の世界でまだ通用していなければ、残りの半分も犬に食わせていただろう。
「あれ？秘籍は？」宋書航は突然尋ねた。彼の想像では、飛剣には大きな包みか何かが掛かっていて、その中に多くの線装本や獣皮巻き軸が入っているはずだった。
しかし目の前の黒鉄の小剣には何も付属品がなく、空っぽだった。
「飛行中に落としてしまったのかな？」宋書航は心の中で疑問に思った。
「秘籍はここにあるぞ」薬師が手を伸ばすと、黒鉄の小剣は静かに彼の手に収まった。そして、彼は小剣の柄から親指大の玉筒を取り外した。それは玉の指輪のようだった。
玉で作られた筒状の物？これを見た時、宋書航の脳裏にあるアイテムの名前が浮かび、思わず口に出した。「伝功玉簡？」
伝承玉簡、伝法玉簡などとも呼ばれる。
これは修行小説で主役が必ず手に入れなければならないものの一つだ。頭に当てるだけで、功法や心法などが脳に刻み込まれる！バカでも完全な功法を覚えられる！
「考えすぎだ...」薬師は肩をすくめた。「伝功玉簡のようなものは極めて貴重で、それ自体が無価の宝物だ。『文字では記録できない』絶世の功法を記録するためにのみ使用される。この基礎構築用の普通の功法に伝功玉簡を使って記録する価値があるだろうか？」
天地法則や大道の至理を含む絶世の功法だけが、文字では記録できない。無理に文字で記録しても、天地間の大道の力によって消されてしまうため、『伝功玉簡』のような貴重な宝物で記録する必要があるのだ。
「じゃあこれは何ですか？」宋書航は尋ねた。
「これは普通のUSBメモリだよ。正直に言うと、人類の科学技術はますます進歩して、発明された多くのものは我々修士も便利に使っている。小さなUSBメモリの中に昔の経蔵一つ分の内容を入れられ、さらに映像も加えられる。本当に便利この上ない」薬師は淡々と宋書航の幻想を粉々に砕いた。
痛い、ママ、肝臓が痛い！