全員の視線がりくやに集まった。
「そうだね、ルオ・イェ兄さんも試合に参加してる!」
「でも相手はスクールチームだろう、学生委員に無理させなくても...」
その言葉と同時に、何人かの女生徒がりくやをこそこそと見ていた。
不安ながらも、その瞳に感動の表情が浮かんでいた。
肝心な時に、やはりりくやのイケメンさが頼りになる!
シェンティンジはその威嚇的な雰囲気のギースを見ながら、眉をひそめた。
鋭敏な直感が彼女に告げる。このギースの実力は決して侮れない!
しかし、目の前に立っているトレーナーは...
確かにいい顔立ちだが、いずれにせよ彼は金融学部の学生だ。
指揮力は対戦学部と比べて絶対に劣るだろう!
「おい、ルオ・イェ兄さん、本気でやるの?」
田有為は静かに言った。「もし負けたら、明日の試合に出られなくなるかもしれないぞ!」
りくやはもともと迷っていた。
田有為の言葉を聞いて、目の前が明るくなった。
それならば、期末試験の勉強に専念できるじゃないか!
田有為の肩をポンと叩いて、りくやは微笑んだ。
「やるぞ」
ゆっくり歩み寄り、りくやは淡々と言った。「うちの魔大には、女性が最初に出るという伝統はないからね!」
「りくや学生委員...」
りくやは背中に突き刺さるような熱い視線を感じながら、背筋にいえを。
シェンティンジの後ろにいた対戦学部の男子たちは、歯ぎしりしていた。
このやつ、イケメンだけでも許せないのに。
彼らの前で自慢話なんて!
これでは我慢できるか?!
金融学部の大学1年生が魔法大学のスクールチームのメンバーに挑戦するなんて。
お前は死字がどう書くか知らないんだろう!
「沈姉、このやつをしっかり懲らしめて!」
「そうだ、トレーナーをやめるまで叩きのめせ!」
りくやはすぐに目が輝き、感謝の眼差しで叫んでいる男子を見た。
「静かにして!」
シェンティンジは体育の先生に向かって言った。「先生、お願いしますが、裁判も兼ねてください」
高先生はため息をついた。「わかったよ、君たちが解決できるならいいんだけど...私もまだ検討中だ」
金融学部の学生たちがりくやに群がり、対戦場に向かって歩いた。
ギースも目が赤く充血しながら田有為の傍らに浮かんでいて、獰猛な笑顔を見せた。
その凶暴な笑顔がシェンティンジの目に映ると、彼女の背筋が一層寒くなった。
しかし、ギースの後遺症による徹夜だけが分かるのはりくやだけだ。
うん……クマがあると確かに凶暴に見えるね!
田有為は不安げな顔でささやいた。「ルオ・イェ兄さん、自信ある?」
「えーと……実は私、指揮があまり得意ではない」
「?」
「これが初めての実戦指揮だよ」りくやは爽やかな笑顔で言った。
「やってみるね!」
「???」
10×10の標準フィールドで、シェンティンジと彼女のブル皇帝は早くも待ち構えていた。
ブル皇帝は闘牛犬のようなポケモンで、凶悪な外見で二足歩行をしている。
淡紫色の皮膚があり、強力なアゴと鋭いキバがある。
シェンティンジのこのポケモンを見た時、りくやは少し残念がった。
もともと萌萌だったラルラスを見ることができると思ったのに!
結局、妖精の家系しかいないブル皇帝のレベルか!
高先生が口笛を吹いた。「試合開始!」
シェンティンジが腕を振り上げ、指さす先にブル皇帝が飛びかかる。
「噛み付く!」
しかし、ブル皇帝が半空中にいるうちに、ギースは嘲笑いながらその側に来た。
シェンティンジは心の中で驚きがよぎった。
これはどんな速さだ?
りくやは心の中でため息をついた。
ブル皇帝が噛み付くことを全世界が知っているのに、何故それを必殺技にするのか?
「ギース、スタンド」
ギースの黒い霧が捻じ曲がり、ガスの塊が分裂し、二つの嘲笑っているギースができた。
驚くべき速さで飛ぶ二つのギースが目の前に広がるレーザスの目に映る、そのすさまじい姿が人々の驚嘆を誘った!
「なんで……沈姉が押されてるみたい?」
「冗談だろ!それはただ敵を油断させる手段だ!」
シェンティンジの額から冷汗が流れ落ちる。
ギースの速さがあまりにも驚異的だ!
速さを制限しなければならない!
「ブル皇帝、オニフェイスを使え!」
「ギース、目を閉じろ!」
指示が同時に鳴ったとき、シェンティンジは震えながらりくやを見た。
彼がまるで「やっぱりそうだ」といった表情で、少し物足りなさそうだった。
「ばれてるって言うか。」りくやつぶやく。
彼女の胸にかつてない圧力がしめつける。
自分は……読まれたの?
先読みとは、トレーナーが戦闘中に相手の指示を予測することである。
これは非常に冒険的な指示戦術である。
失敗すれば、局面が完全に崩壊することになる。
しかし、先読みに成功すれば、相手のメンタルにとって破滅的な打撃となる!
そんなことない、ただの偶然だ!
シェンティンジが口元を硬く結んでいる。
彼は私の指示を偶然当てただけだ!
試合中、ブル皇帝の恐怖の顔はまるで盲目の人に見せているかのようで、まったくはずれていた。
一方、ギースは目を閉じながら、体に妖艶なふしぎなひかりを放っていた!
光が瞬く、ブル皇帝は頭を振って混乱に陥らなかった。
これによってシェンティンジはホッとして、視線を再びしっかりとしたものに戻した。
「ブル皇帝、噛み付け!」
ブル皇帝は大きく口を開けるが、ギースに簡単に避けられる。
シェンティンジは茫然とりくやを見る。
彼は足元を指さして、仕方なさそうに頭を振った。
ギースのくろざめのせいで、ブル皇帝の両足が震えて、まったく動かない!
「ブル皇帝は見た目が凶悍だが、性格は意外に臆病だよ。」りくやため息をつく。
「せめて図鑑をもっと見ていれば、彼とギースが見つめ合わないだろう。」
シェンティンジは口を開こうとするが、喉が詰まってしまう。
「ぼーっとしてないで!」りくやも焦ってきた。
「これは言葉で挑発するんだと思う、それが戦術だ!」
りくやは馬鹿げた。
彼は魔法大学のチームメンバーであろうと、ゴミのような戦術を見破れると思っていた。
それなのに、彼が口を開く前に、この少女はもう自閉症になっているのか?
こんなことでは演技すらできないよ!
シェンティンジは唇を固く噛んで、声が震えている。
「ブル皇帝、し、使え……」
「ギース、れいか!」
「シエ!end!」
獰猛な表情のギースが空中を舞い、3つの冷たいれいかが絶え間なく旋回しながら、最後に爆発的な火球に集まる。
寒々しい波動の中で、ブル皇帝は「ポン」という音で吹き飛ばされ、皮膚には散乱した痕跡が残っている!
「アウーー!!」
ブル皇帝が悲鳴をあげるが、ギースの連続技は止まらない!
これはターン制のゲームではない。
シェンティンジが局面を打破する方法が見つからなければ、ギースの攻撃がずっと続く!
それにしても、ギースの驚異的な速さの前に、ブル皇帝は反撃の隙を全く見つけられない。
シェンティンジのぎこちない指示に、りくやは焦りを感じる。
魔都大学はどうなったんだ?
今のチームは、こんなレベルしかないの?
ゲームで会ったことのある人たちの方が、もっとうまかったよ!
「轟!」
最後の爆発音と共に、ブル皇帝は途中で倒れ、床に落ちる。
沈んだ静けさの中で。
みんな茫然とりくやを見つめて、頭の中で大きな疑問符が浮かんでいる。
りくやは……学生チームのメンバーに勝ったのか?
りくやの試合前の言葉を思い出し、田有為はぼんやりしている。
これが、ちょっとも指揮できないって言うんだ?
口で「そんなにできない」と言って、結果は指揮だけで学生選手を圧倒した?!
ルオ・イェ兄さん、ちょっとびりんしょうち賞くらいは取らないと!