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31章 抵抗を諦める?

小さなラッタたちが、蜂のように群がり押し寄せてきた。

それでも準備をしていた夏彦と一角虫でさえ驚いてしまう。

「より困難だと思われるこの任務。」と夏彦は心の中で呟いた。

しかし、驚きは驚きであり、まだ焦るほどの状況ではない。

「一角虫、電子ネットワーク!

「う!」

一角虫の口が開き、蜘蛛の巣のような広い通信網を吐き出し、その上に黄色い電弧が跳ねる。

触れた瞬間、ラッタが続々と電気を帯びた捕獲網に巻き込まれ、その場で悲鳴を上げる。

「毒針!」

夏彦は階段を降りながら、肩に乗った一角虫が毒針を次々に発射し、膨大な量のラッタたちが倒されていきました。

けれども、これといった進歩が見られず、夏彦はやむなく階段口へ後退していく。

狭いドアフレームに目をやる。

そこで夏彦はひらめき、大声で命じた。「一角虫、このドアをシルク糸で塞げ!」

それを聞いた一角虫は目を輝かせ、彼の意図をすぐに理解する。

シルク糸を口から吐き出し、丈夫な糸でドアフレーム全体を密閉させる。

視界は遮られたが、ラッタたちの前進が妨げられるようになる。

その後・・・

一角虫がすべきことは、これらの穴を通して、彼らに向かって次々と毒針を投げ込むことだけだった。

ラッタの数は多いが、夏彦は明らかに見て取った。このラッタたちは差し支えなく、門口で阻止していた彼らとアーサーのそばのラッタたちとは大差ない。

弱々しく狂気に満ち、規律が欠如している。

方法さえあれば、それらを処理する難しくはない。

「珍しい訓練の機会じゃないか。こんなにたくさんの生きたポケモンたちを訓練の為に使うなんてね。」

彼らが前進を妨害できる状況にいるので、焦る必要もなく、むしろ良い訓練の機会だと見ていた。

そして夏彦の脳裏に、ひとつのちらつきが過ぎる。ただし、今回は一つだけだ。

これがもしゲーム内であったら、これだけの数のラッタは、レベルが低くても一角虫のレベルも高くないから、経験値をいくら得られるだろうか?

それで完了するのか、一角虫は進化するのか?

直後に笑いとともに、首を振るが、くだらない考えは脇に置く。

「う!」

一角虫はまじめに毒針を発射し、糸で塞がれるドアフレームの向こうのラッタを次々と撃つ。

もしシルク糸が突破されそうになれば一時攻撃を停止し、再度糸を補repair、やむを得ない時には電気ショックでネットワークを投入し、確実にラッタを防げる。

この方法で、夏彦と一角虫は境を抜け、「経験値洗い」のような形で、ラッタたちの群れを片付けていく。

同時に、夏彦はある特別な状況に気づいた。

元々群れを成して狂ったラッタたちは、毒針を受けた後、こんなに早く戦闘力を失うはずはない。

それでも毒針に当たったラッタは、まるで狂気から一瞬で回復し、本能と理性を取り戻したかのように、一角虫を躊躇ってみた後に、立ち去っていった。

清算は速く進んだ。

それで、すぐにでも。

ドアフレームの向こうにシルク糸を張っているうちに、ネズミが全員撤退したり逃げ出したりした。

そして、夏彦と一角虫を阻止していたラッタたちは、とうとう全てのことが片付いた。

強靭な結束を持ち、ラッタが突破できないほどのシルク糸の巣を、 一角虫はするりと尾で切り開く。

階段を再び上り始め、上へ向かった。

「う?」と一角虫がさざめく。

夏彦はエネルギーブロックを取り出す。これが彼自身が持っている最後の一つで、今日の任務が完了できるかどうかにかかわらず、新たなエネルギーブロックを購入する必要がある。このものはポケモンにとって非常に大きな利益があるもので、なるべく途切れない方がいいのだ。

「君が言うには、これらのラッタはどうして一体?」と尋ねる。

「確かに何らかの存在によって操作されているようだ。そして、私たちの今回の任務は、その存在を捕らえることだ。」

「う?」

一角虫は驚愕の表情を浮かべた。

どのような存在が、これほどの数のラッタを操ることができるのだろうか?

「見たことがないだけで、驚くべきことではない。ただ……」ロートからもらったタスク文書を思い出しながら、「今回のタスクの目標は、確かに少し特別だ。」

「うー……」

「会えばわかる。」

階段を上がって。

目的地がどの階にあるかはわからないが、独角虫は多少の本能的な感覚がある。

気づかれない間に、一気に古い住宅ビルの最上階に到着。

階段の最上部には、ほぼ完全に密閉した小さな空間があり、窓もなく、明るくもなく、暗くて閉ざされた環境である。

こういった場所は、住民たちが雑物を保管している場所であることが多い。

しかし、夏彦と独角虫が到着すると、ここは驚くほど清潔で、ほこりひとつないことに気づく。

「ウー!」

独角虫が軽く鳴き声をあげ、小さな目で角に目を向ける。

それに気づいた夏彦は、その目線の先を見る。

ほぼ完全な暗闇のこの狭い角で、痩せ細った姿が座っているのが見えた。

星末の光でかろうじて、黄色と茶色の組み合わせの身体が見え、淡い色の耳が頭に生えており、長くもなく短くもない鼻が行ったり来たりしている。

その姿を見て、夏彦は今回のタスクの目標だと確信できる。

超能力系ポケモン、サイネムリープ!

夏彦と独角虫の到着に、サイネムリープは特に興味を引かれていないようで、ただ箱の上に静かに座っている。

近づくと。

夏彦は驚くことに、このサイネムリープの手には、なんと一冊の本がある。

一冊……特に難解でもなく、むしろ非常に簡単で子ども向けの本で、子どもたちが喜んで聞くような短い物語がプリントされている。

しかし、このサイネムリープは夢中になって読んでいるようだ。

口元が上がっていたり、耳が動いたりすることで、それがわかる。

夏彦は驚くほど静かで、ただ箱を引っ張ってきて、サイネムリープからあまり離れずに座る。

独角虫は好奇心旺盛な目をまばたかせる。

本を読むポケモンに初めて出会った。

肝心なのは、ポケモンが本の文字をどのように理解するかだ。

奇妙な静けさが徐々に広がる。

最後に。

パチ!

まだ物足りなさそうなサイネムリープは、ゆっくりと本を閉じ、箱の上に丁寧に置く。本と箱の角がぴったりと合うようにこする。折り返しの角を少し浮いたページをなびらせる。

夏彦と独角虫を見て、独角虫をちょっとだけ見た後、最後に夏彦に目が止まる。

目には突然、淡い青色の光があります。

独角虫はひとしきりに動いた後、夏彦の前に行く。

しかし、攻撃をしようとする前に、夏彦は軽く背中を叩き、落ち着くように合図する。

彼の耳には、幼い声が聞こえるからだ。

「こんにちは!」

「心電感応?」夏彦は、サイネムリープを見ながら首をかしげる、目の光と自分の頭の中の声は、このことを示している。

「そうです。」声が再び聞こえる。

夏彦は、思わずサイネムリープに返事をしたが、どうやらサイネムリープにも聞こえているようだ。

「だから、建物の下にいた、あのラッタは、君が操っているんだね。」夏彦は、少し驚いたが、それだけだ。

「はい。」サイネムリープは落ち着いてうなずく。

再び独角虫を見て、静かに言う。「あなたたちは彼らから来たんですね。ありがとう。最後の話が読み終わったら、準備ができました。あなたがやってください。」

言葉は少し詰まっているが、大体の意味は伝わる。

サイネムリープの目の青色の光が弱くなり、両腕を開いて、静かに受け入れる姿勢を見せる。

これは.....

抵抗放棄?