
転生前、夏目雫はこの男性のことを何も知らなかった。ただ、彼の名が加藤昭彦だということだけ。 転生後、彼女は彼と何度も偶然出会い、縁が切れなかった。彼はいつも彼女の最も惨めな時に現れた。 彼女は彼のことを「お兄さん」と呼び、「加藤先生」と呼んだ。やがて気づく――彼こそが、子供の頃に出会った「お兄さん」でもあることを知った。 雫、雫……その声には、甘やかで優しく、切ない響きがあった。 彼は彼女に対して師であり、友であり、父のようでもあった。彼は彼女の導師であり、導いているうちに、彼女を自分の心の中へと導いていった。 転生前、彼女は人を見る目がなく、狼を家に招き入れ、家族崩壊という結末を招いた。 転生後、彼女は家族の安全を守りたいだけだった。 だが、まさかこの人生で、こんなにも深く、誰かを愛せるとは思わなかった。身も心もすべてを懸け、たとえ地獄に堕ちても惜しくないほどに。 彼女は下に、彼は上。 いつも冷静だった彼の瞳には、今や熱く燃える情が宿っていた。 「雫、俺は誰だ?」 「あなたは、私の親愛なる加藤様」 汗が彼女の頬に落ち、人前では冷淡な彼の顔に、人を魅了する艶やかな色が浮かぶ。 カット1 壁に押しつけられ、心がざわめく。 「加藤昭彦、あなた、自分が何してるかわかってるの?」 「分かってるよ、キスしたいんだ」 「私たち合わないわ。知ってるでしょう?私、あなたが思うほど優しくないって。」 「ちょうどいい。少し意地悪な君のほうが……魅力的だ」 一度のキスが終わると、彼女はめまいがする。 彼は言った。「ほら、俺たち、案外お似合いだろ?」 カット2 二人の関係が公になり、噂が広まり、彼の会社は倒産寸前、世間の非難が集中する。 彼は言った。「出て行け、誰が君に帰ってきていいと言ったか?」 彼女は彼の手を握り返す。「約束したでしょ。手をつないだら、一生離さないって。」 彼、加藤昭彦は冷たい男――だが、愛する人への執着は誰よりも深かった。 一度心に決めた女なら、一生守り抜く。手放すことなどありえない。 ……けれど彼は知らなかった。 いつか“守られる側”になる日が来ることを。 ※純愛ストーリー、一対一、男女主人公ともに純潔。