葉辰が洗面所から出てきたところ、ちょうどお茶菓子を運んでいる可愛らしい女性が彼の個室に向かっているのに出くわした。
彼は個室に誰かが邪魔しに来るのを望まなかったので、その可愛らしい女性に「それは私が持っていきます」と指示した。
スタイルの良い美人ウェイトレスは、葉辰が個室の主人であることを当然知っていた。前例はなかったものの、うなずいて慎重に葉辰に手渡した。
「葉様、何かございましたら、テーブルのボタンを押してください」
彼女にはよくわかっていた。相手は若く見えるが、御豪クラブに入れる人物は、彼女が敵に回してはいけない存在だということを!
女性スタッフを見送った後、葉辰はお茶菓子を持って個室に入ろうとした。
突然、背後から澄んだ女性の声が聞こえた。
「葉辰?」
その澄んだ声を聞いて、葉辰の体は石のように固まった。
彼の瞳には次第に冷たい光が宿っていった。
楚淑然!
江城楚家の楚淑然!
彼は決してこの女の声を忘れることはないだろう!
学校中の皆の前で自分を拒絶したのは、まさにこの女だった!
さらには「役立たず」という言葉が彼の悪夢となった!
彼を奈落の底へと突き落としたのだ!
もしこの一件がなければ、両親も雲湖山荘のパーティーに行くことはなく、死ぬこともなかった!
もっとも、正直に言えば、この件を全て楚淑然のせいにすることはできない。
姚金谷は死ぬ前に彼に告げた。たとえ両親があのパーティーに参加していなくても、京城のあの男は葉家を見逃すことはなかっただろうと。
これは全て、ただの陰謀に過ぎなかった。
葉辰は殺意を抑えた。女性を殺すような習慣はなかったが、この女に少しずつ恐怖と後悔を味わわせる方法を考えるつもりだった。
それは彼女を殺すよりも、おそらくもっと苦しいことだろう。
葉辰は振り返り、目の前の楚淑然を冷ややかに一瞥した。
さすがは当時の学校一の美人だけあって、5年の歳月を経て、楚淑然の容姿はますます輝きを増し、体つきも発達して、異常なまでに豊満で魅惑的になっていた。
彼女の雰囲気も未熟さを脱ぎ捨て、代わりに冷たさと艶やかさを帯びていた。
ただし、その眼差しに無意識に漂う高慢さだけは、相変わらずだった。
江城第一の名門楚家、それが楚淑然の高慢さの源?
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