美月は少し微笑んで答えた。
「玲奈ちゃん、私にも秘密があるの。だから、あの日のこと、教えてくれない?」
彼女の目は真剣そのものだった。玲奈は一瞬戸惑いを見せたが、やがて深い溜息と共に話し始めた。玲奈は少し俯きながら、小さな声で答えた。
「あの日、誰かの声が聞こえたの…『見せて』って。何のことかわからなかったけど、体が動かなくなって…。」
美月は驚きと共に胸の奥がざわつくのを感じた。
「その声、どんな感じだった?」 玲奈は震える声で続けた。
「優しいけど、怖い感じもした…。何かを試されてるみたいで…。」
美月はその言葉を胸に刻み、
「わかった、ありがとう。これで少し手がかりが掴めたかも。」
と言って、玲奈に優しく微笑んだ。
桜咲美月は玲奈の言葉に、背筋が凍るような感覚を覚えた。優しいながらも不気味な声、それは彼女の超能力にも関係しているのだろうか。
「玲奈ちゃん、怖がらないで。きっと私たちが守るから。」
美月は力強く言い、玲奈の肩に手を置いた。
その手には、玲奈を安心させるための優しさと決意が込められていた。
美月は深呼吸をして心を落ち着け、再び教室へと足を向けた。廊下の窓から差し込む夕陽が、彼女の長い黒髪を金色に染めた。
「玲奈ちゃんから聞いたよ。」
美月は教室に戻るとすぐに声をかけた。
「あの声、優しくて怖い感じがしたって言ってたの。何か試されてるみたいだったって。」
美月の瞳には、玲奈の話を思い出す度に増していく不安と決意が混ざっていた。
彼女は自分自身の超能力を信じ、それを使いこなすための新たな一歩を踏み出そうとしていた。
「美月、それって明らかに偶然じゃないな。」
僕は立ち上がり、彼女の話を真剣に受け止めた。
「玲奈ちゃんを狙った奴が、次に何を仕掛けてくるか分からない。急いで動こう。」
窓の外を見ると、夕陽が沈みかけている。時間は限られているようだ。
「まずは、声の主がどこにいるのか探す手がかりを見つけよう。玲奈ちゃんが感じた方向とか、他に聞いたことがないか、彼女にも確認してみよう。」
僕は美月を見つめ、「一緒にこの謎を解こう。君の力が鍵になるはずだよ。」と力強く言った。
桜咲美月は僕の言葉に頷き、真剣な表情で立ち上がった。
彼女の瞳には決意が宿り、その中に一抹の不安も見えた。
「うん、すぐに玲奈ちゃんに聞いてみるね。」
美月はそう返すと、再び廊下へと駆け出した。
彼女の背中は、夕陽に照らされて輝いていた。
玲奈の教室に戻った美月は、息を整えながら言った。
「ねえ、玲奈ちゃん、もう少し詳しく教えて。何を感じた?」
玲奈は再びその日を思い出し、ゆっくりと話し始めた。
「うん…そういえば、あの声が聞こえたのは体育館の方だった気がする。」
美月はその言葉に目を見開いた。
「体育館ね、ありがとう、玲奈ちゃん!すぐに調べてみる。」
彼女は玲奈に優しく微笑んでから、急いで教室を出て行った。
体育館へと向かう途中、美月は心の中で僕に呼びかけた。
「体育館が怪しいってわかった。すぐ来て!」
体育館の扉を開けると、美月は瞬時に異変に気づいた。
空気が微かに震え、彼女の超能力が反応したのだ。
「ここだ…」美月はそう呟き、拳を強く握りしめた。
「了解、美月!すぐ向かう!」
僕は彼女からの呼びかけを受け、足早に体育館へ向かった。何かが起きている。彼女の直感と能力が反応しているなら、ここが鍵だ。
体育館の入り口に辿り着くと、美月が静かに立ち尽くしていた。
その表情には不安と緊張、そして強い決意が浮かんでいた。
「何か感じるの?」
僕が問いかけると、美月は小さく頷き、視線を奥へ向けた。
「空気が…揺れてるみたい。何かがここにいる、隠れてる感じがするの。」
僕は彼女の隣に立ち、慎重に周囲を見渡した。体育館の薄暗い空間には、不自然な静寂が漂っていた。
「一緒に調べよう。でも気をつけて。何が出てくるか分からないから。」
僕たちは静かに奥へと歩を進めた。
緊張感がピークに達する中、微かに光る何かが視界の隅に現れた。
「美月、あれを見て!」僕は指差し、彼女に知らせた。