第360章 陥れる

記者の言葉は、明らかに前もって用意されていたものだった。

顔お爺さんはそれを見抜いていた。彼は無意識に近くにいる韓蒙を一瞥した。

その時、韓蒙は丁度顔お爺さんを見つめており、顔お爺さんの答えを待っていた。

目が合うと、韓蒙の表情が一瞬変化した。

顔お爺さんの瞳からは、人を威圧するような光が放たれた。

それに韓蒙は額に冷や汗を浮かべた！

彼は慌てて顔を横に向け、顔お爺さんと目を合わせることができなかった。

この質問について、ほぼ全員が興味を示していた。

一瞬にして、無数の視線が顔お爺さんに集中し、彼の答えを待っていた。

秦玉でさえ、少し緊張していた。

顔お爺さんはカメラを見つめ、淡々と言った：「ちょうど皆さんにご紹介しましょう。」

そう言って、顔お爺さんは秦玉を見つめ、カメラも秦玉に向けられた。

「秦玉は、確かに我が顔家の婿候補の一人です。」顔お爺さんは淡々と言った。

この言葉に、会場は驚きに包まれた！

皆が思わず息を呑んだ！

顔お爺さんが...認めたのか？

この秦玉が、本当に顔家の婿なのか？

韓威の表情が、極めて険しくなった！

必死に心の怒りを抑えようとしていたが、顔には怒りの感情が表れていた！

「韓威も、素晴らしい若者で、私も期待しています。」顔お爺さんは話を変え、にこやかに言った。

曖昧な答えに、皆が戸惑いを感じていた。

「顔様、この二人の間で、どのように選択されるのでしょうか？」司会者は追及するように尋ねた。

顔お爺さんは水を一口飲み、淡々と言った：「私は開明的な人間です。孫娘の意見を聞きます。」

まずい！

顔お爺さんの言葉を聞いて、韓家のほぼ全員の表情が一変した！

誰もが知っている、この顔若雪が秦玉に好意を持っていることを。

顔お爺さんのこの発言は、遠回しに秦玉を選んでいるのではないか？

傍らの秦玉は、少し安堵の表情を見せた。

彼の顔には、感謝の念が浮かんでいた。

「顔お嬢さん、それでは...」

「質問は十分でしょう。」記者がさらに質問しようとしたが、顔お爺さんに遮られた。

記者は少し気まずそうに、「では、これ以上お邪魔はいたしません。改めてお誕生日おめでとうございます。」と言った。

そう言い残すと、記者は急いで立ち去った。

韓蒙は深いため息をついた。