第54章 林家武道館

阿龍は林菀に平手打ちされても、一言も言わなかったが、彼の手は依然として林菀の手首をしっかりと掴んでいた。

林菀は振り払えず、苛立ちながら後ろのボディーガードを見た。

「張星、早く彼を殴りなさい！」林菀は叫んだ。

張星と呼ばれた男が一歩前に出て、手を上げて阿龍の手首を叩いた。

「パン」という音と共に、阿龍は手首の痛みで思わず手を離した。

「阿龍、どうした、雷虎の配下になったら自分が何者か忘れたのか」張星は冷笑した。

阿龍は顔を曇らせ、苦笑いしながら言った。「師兄、確かにこの件は林お嬢さんが間違っています...」

「誰が正しいとか間違っているとか関係ない。師匠の命令は彼女を守ることだ！」張星は冷たく言い放った。

「くだらない話はやめて、早く彼を殴りなさい！」傍らの林菀は怒り狂った獅子のように、絶え間なく叫び続けた。

秦玉の表情は一層冷たくなった。

彼は林菀を冷ややかに見つめ、言った。「若いのに随分と横暴だな。親はどんな教育をしたんだ？」

「あなたに私の両親のことを言う資格なんてないわ！」林菀は目を見開いた。

「張星、彼を殴りなさい！」林菀は足を踏み鳴らしながら、怒って言った。

張星が一歩前に出て、秦玉を上から下まで見渡し、淡々と言った。「若いの、早く白芷を我がお嬢様に返して、それから謝罪すれば許してやる」

秦玉は冷笑して言った。「お前にその資格があるのか？」

張星は表情を変え、即座に大声で叫んだ。「死にたいようだな！」

そう言うと、張星は拳を握りしめ、秦玉に向かって振り下ろした！

確かに、この張星の実力は阿龍を上回っていたが、それでも姚青にも及ばず、どうして秦玉の相手になれようか？

秦玉は相手を見もせずに、足を上げて張星の腹部を蹴った。

張星の拳は秦玉に触れる前に、体が「シュッ」と飛ばされ、地面に激しく叩きつけられた！

口から鮮血が噴き出した！

この光景を見ても、林菀は少しも反省せず、むしろ拳を握って秦玉に向かって殴りかかった。

「あなたは終わりよ。私に手を出すなんて、父が必ずあなたを殺すわ！」林菀は拳と足を使って、秦玉に向かって攻撃を仕掛け続けた。

秦玉はますます我慢できなくなり、この横暴な者を一発で気絶させてやりたかった。

しかし、伝統的な教育を受けてきた秦玉は、女性に手を上げることができなかった。