第428章 魔力の探求
「……成績？」ティリーは不思議そうに書類を受け取り、ちらっと目を通した。「彼女の進歩は確かに大きいわね」
「そうだな」ローランは頷いた。「ルシア・ホワイトは金穂城の商人の家の出身で、もともと文字や算術の基礎があった。それに自然科学基礎理論の授業の理解も良好だったからこそ、このような成績を収めることができたんだ」
「私は別に、あなたの言う『世界への理解と認識を深めることが能力進化を促進する』という説を疑っているわけじゃないわ」ティリーは口を尖らせた。「でも、それと魔力侵食とどう関係があるの？」
「リリーやリーフ、ミステリームーンたちの観察によると、能力進化の際には同時に体内の魔力許容量の上限も上がる。この効果も世界の認識度合いと大きな関係があると思う」ローランはアエゴサの言う「古代高位覚醒」と町の魔女の「能力進化」の違いについて、自分の推測を詳しく説明した。「本質的には同じことだが、部分的あるいは孤立した悟りの効果は、包括的で全体的な世界認識に比べて魔力の上昇度が遥かに劣る——ミステリームーンは良い例だ。彼女は魔女連盟のメンバーだが、悟りによって進化を遂げたため、魔力レベルはアンナやソロヤに遠く及ばない」
ティリーはしばらく考え込んだ後、すぐにローランの意図を理解した。「つまり、ルシアお嬢さんは、それまでずっと低い魔力レベルで過ごしていて、普段も覚醒の日も、体はその魔力強度に適応していた。そして今回、成人の時に偶然進化も同時に引き起こされ、体内の魔力が一気に何倍にも跳ね上がって、体が受け入れられる限界を遥かに超えてしまったということ？」
「おおよそそうだが、私はこの二つは異なるものだと考えている」ローランは指を折りながら言った。「魔力に関して言えば、重要な上昇ポイントは覚醒の日、成人の日、そして進化だ。一見効果は同じように見えるが、前の二つは強制的な増加で、後者は自発的な上昇だと考えている」
「なぜそう考えるの？」
「能力進化では魔力侵食の症状が出ないからだ」王子はゆっくりと言った。「もし両者に違いがないのなら、アンナが進化した時の急激な魔力の増加は彼女を死に至らしめていたはずだ。私の仮説では、魔女の体には魔力許容量の警戒ラインがあり、それを超えると体が侵食の痛みを感じる。日々の訓練でその上限を徐々に上げることができ、覚醒前に魔力を空にする目的もそこにある」
「警戒ライン？面白い説明ね……」ティリーは考え深げに言った。「あなたは、ルシアお嬢さんの進化時の魔力増加が多すぎて、覚醒の日に強制的に流入する魔力のための余地が足りなくなり、最終的に限界を超えてこの事故を引き起こしたと考えているの？」
「その通りだ。アンナもルシアと同じく成人時に最初の進化を経験したが、彼女はそれ以前から驚くべき魔力量を持っていて、侵食の警戒ラインも一般の魔女よりずっと高かった」ローランは一旦言葉を切った。「さらにこれは、スペールが暴走した魔力を抜き取った後にルシアが正常に戻った理由も説明できる——その魔力は本来彼女のものではなかったんだ」
「あなたのその考え方は……確かに多くの問題を説明できるわね」彼女は髪の毛を耳にかけ、顎に手を当てて考え込んだ。「なぜ同じ源の魔力が、魔女の体内で異なる形態を示すのか。なぜ外界の遊離魔力は魔女が覚醒する時にしか見えないのか——それは魔女に受け入れられて初めて自身の一部となるからなのね」
ローランは笑って言った。「覚醒は魔力を引き寄せるものの、最終的にはごく一部しか留まらない。一方、進化は自身のその一部を拡大・強化するもので、認識の範囲が広いほど、強化効果も高くなる。進化に回数制限がないのも道理にかなっている——世界の探求に終わりなどあるはずがないからね」
「急に気になってきたわ」
「何が？」
「もしあなたが魔女だったら、進化後の魔力はどれほど壮大なものになるのかしら？」ティリーは口元を押さえて笑った。
ローランはお茶を飲みかけて咽せそうになった。超越能力の不思議さを自ら体験してみたい気持ちはあるものの、そこまでの代償を払うのは御免こうむりたいものだった。
「あなたが編集したこの教材、眠りの島に持ち帰ってもいい？」彼女は眉を上げた。
相手の口調は何気なく聞こえたが、ローランは彼女の右手がスカートを軽く握っているのに気付いた。
「もちろん問題ない」このような基本的な選択問題で間違えるはずがなく、しかも一般的に言えば、答えは断固としているほど良い。「眠りの島の魔女たちの進化の助けになるなら、辺境町にとっても良いことだ。それに、君は私の妹なんだから」
すると左肩をナイチンゲールに強く摘まれた。
「……」ティリーは後半の言葉には反応せず、軽く頷いて言った。「ありがとう。では、これで失礼するわ」
「ああ」
どうやら自分の態度が大げさすぎたようだ。信頼できる説明を得られていない状況では、このような親密さを装った言葉に彼女は興味を示さないのかもしれない。
しかしローランが意外に思ったのは、ドアの所まで行ったティリーが立ち止まり、振り返って小声で言ったことだった。「時々、あなたが私の兄じゃなければいいのにって思うわ」
……
ティリーが去った後も、ローランは事務机に座ったまま、彼女の最後の言葉が頭から離れなかった。
私の兄じゃなければいいのに、これはどういう意味だろう？
「おい、ぼーっとしてどうしたの？」ナイチンゲールが姿を現し、彼の前で指を振った。
「彼女が最後に言った言葉、一体何を言いたかったんだろう？」
「さあね」ナイチンゲールは肩をすくめた。「たぶん、親族より同盟者として付き合う方が適切だと思ったんじゃない？」
ローランは当然、考えてはいけない方向に推測を巡らせることはなかった。冬の半分を共に過ごして、彼はこの王家の娘の性格をよく理解していた。
もしかして、彼女が伝えたかったのは、実は第四王子の帰還を望んでいないということなのか？それとも単に、自分が関係を取り持とうとしたことへの反発なのか？
「どうせあなたは彼女の兄じゃないんだから、そんなに気にすることないでしょ」ナイチンゲールは机の上に腰掛け、長い脚を投げ出しながら、干し魚を一切れ口に放り込んだ。「それに、あなたがあの言葉を言った時、能力を使わなくても嘘だってバレバレだったわよ」
うっ、そうだったのか……ローランは鼻を撫でながら、答えは後者なのだろうかと考えた。
「それに、ティリーは実の妹じゃないんだから、『自然なんとか原理』を全部渡して大丈夫なの？」
「『自然科学理論の基礎』だよ」王子は溜息をつきながら言った。「冬の数ヶ月もの間、彼女が写し取れなかったと思うかい？きっと内容は既に暗記しているはずだ。それでも、彼女は正式に私にこの要求をしてきた。相手の態度が分かるだろう」
少なくとも政治的な同盟関係という観点からは、ティリーの誠実さは申し分なかった。
彼は少し間を置いて、続けて言った。「それに眠りの島は主に魔女で構成されている。全員が進化したとしても、依然として魔女の力に頼ることになる。一方、私は違う。この知識は魔女を進歩させるだけでなく、民衆も進歩させることができる……私が頼るのは、全ての人々の力なんだ」