第53章 心の炎（下）
アンナが目覚めた翌日、ナイチンゲールはローランに別れを告げた。
「理由はわかりませんが、彼女は恐らく覚醒の日を無事に乗り越えた最初の魔女でしょう」出発前、ナイチンゲールは興奮して言った。ローランと長く過ごすうちに、彼女も魔女の変化を覚醒と呼ぶようになっていた。「共助会の姉妹たちを連れてきます。その時は、アンナを受け入れてくださったように、彼女たちも受け入れていただけることを願っています」
ローランにとってこれ以上望むことはなかった。アンナ一人だけで熱鍛工芸を超え、町に工業時代の曙光をもたらした。魔女たちが大勢いれば、それはどういう意味を持つのか？もちろん、安全面を考慮して、邪魔の月が終わってから絶境山脈へ向かうよう引き留めようとした。
しかしナイチンゲールは明らかに待ちきれない様子だった。「今年の冬、まだ多くの人々がこの試練に直面します。早めに彼女たちに知らせることができれば、私たちから離れていく人が少なくなるかもしれません。ご心配なく、普通の邪獣では私の行方を見つけることはできません」
「では、あなたの覚醒の日はいつなのですか？」ローランは最後に尋ねた。
ナイチンゲールは馬に跨がり、「冬の終わりから春の始めの頃です」と手を振り、王子に背を向けたまま言った。「私のことは心配しないでください。近年はあの苦痛も段々と薄れてきていますから」
この答えにローランは思案に暮れた。
彼はアンナがこれほど順調に覚醒の日を乗り越えられた理由についても考え続けていた。結局のところ、アンナは後になって、まったく痛みを感じなかったと言っており、これはナイチンゲールの認識を完全に覆すものだった——「魔女の力は悪魔から来ており、不浄なものである」といった言説はまさにこれが理由で、死に際に血が蒸発し、表皮が焦げ黒くなる惨状は堕落の力の揺るぎない証拠とされていた。
しかしローランは最初からそのような方向では考えていなかった。
彼は第四王子の記憶を隅々まで探っても、この世界に真の神や悪魔が存在する証拠は見つからなかった。力が神から授かったものでないなら、善悪を判断する基準とすべきではない。実際、神々が頻繁に俗世に干渉する世界でさえ、信者が先に自分の陣営を選んでから神力を授かるのであって、その逆ではない。
ナイチンゲールの説明によると、魔女は魔力の集合体だという。魔力の放出口がないことで容器自体が損傷するのではないだろうか？ローランはこの可能性が高いと考えた。魔女は大多数の人々から敵視され抑圧されているため、必然的に自分の能力を隠し、普通の人のふりをして、びくびくしながら生きていくことになる。これにより、成人するまでほとんど魔力を使う機会がない。
ローランは自分の城が風水の良い場所だとは思っていなかった。アンナに尋ねたところ、それまでは耐えがたい苦痛を経験していたという。この一年で違うことといえば、城に来てからほぼ毎日この力を使っていたということだった。
そしてナイチンゲールの最後の答えは、彼の推測を密かに裏付けるものだった——インビジブルの能力は頻繁に使っても人目につかず、さらに彼女は以前この能力を強制的に訓練されていたため、今では思いのままに使えるようになっており、そのため覚醒の日の反動も彼女にとってはそれほど大きくなかったのだ。
ローランは城に戻るとすぐにナナワの訓練を強化した。防衛線に負傷者が出なければ、様々な小動物を治療させることにした。もしナナワを通じてこの推測が証明できれば、魔女にとってその意味は革命的なものとなるだろう。悪魔の呪いは天からの恩寵へと変わる。彼が自分の領土で魔女に対して開放的な態度を保証できれば、魔女たちは絶え間なく集まってくるはずだ。
いずれにせよ、この波乱が過ぎ去った後、すべては正常な軌道に戻った。
ローランは蒸気二号機の生産を急ぎ始めた。それは同時にアンナが新しい能力に慣れる過程でもあった。
城の裏庭にまた小屋が建てられた。ただし今回は風雪を防ぐためだった。実験基地として、現時点では自分の領土に建てるのが最も安全だと考えた。
ナイチンゲールの話によると、魔女は成人後、能力が安定し、新たな派生能力が生まれる可能性があるという。彼は今のところアンナに新しい能力が現れるのを見ていないが、炎の使い方は以前とは完全に異なっていた。
いや、それを炎と呼べるかどうかも問題だ……ローランは考えた。以前の炎が常識で理解できる範囲内だったとすれば、今の碧緑の幽炎はもはや常識では説明できないものになっていた。
彼はそれを「心火」と名付けた。
なぜなら、それはアンナから離れて単独で存在でき、同時にアンナの意志によって形を変えることができたからだ。今彼女がしているように——
小さな炎が彼女から2メートル離れた鉄板の上に立ち、前後に微かに揺れ、まるで彼女に会釈しているかのようだった。しかしローランは知っていた、それはアンナが操っているのだと。普段は体温に近い温度を保ち、アンナが温度を上げたいと思った時だけ、瞬時により高温になり、色も碧緑から墨緑に変化する。同様に、一つの炎から大きな炎の束になることもでき、ゆっくりとした速度で移動することもできた。
残念ながら、それはアンナから遠く離れることはできず、繰り返しテストした結果、5メートル以上離れると心火は消えてしまうことがわかった。
心火のもう一つの特徴は、アンナが複数の炎を召喚できることだった——ただし、現在は同時に二つの炎を操作するのがやっとだった。
最近の辺境は実に平穏だった。邪獣は依然として城壁の外に次々と現れていたが、混合種は存在せず、普通の邪獣では防衛線を突破するのは難しかった。ローランが言ったように、強いものはより強く、速いものはより速くなったが、それでも野獣に過ぎなかった。広大な城壁の一部分に誘導されることで、わずか百余人の義兵隊でも対応できていた。
そのため、毎日の巡視以外は、ローランには建設に費やす時間が十分にあった。
彼はすでに城の南側に一画を区画し、魔女たちが到着した後の居住地として計画していた。このプロジェクトの投資者として、カールを責任者に任命し、この地に二階建てのレンガの家を建設させた。同時に、美しく合理的な配置、出入りの便利さ、排水の迅速さなどの問題を考慮し、モデル団地として作り上げることを目指した。
魔女たちを新旧市街地に分散させ、町民と混住させることも考えたが、後で考え直してこの案は断念した。そうすることで町民の魔女に対する理解を促進できるかもしれないが、誤解が完全に解消される前に問題が発生すれば、その結果は取り返しがつかないかもしれない。結局のところ、現在魔女は義兵隊の中でしか一定の影響力を持っていないのだから。
さらにローランは、ナイチンゲールが連れてくる魔女たちが皆純粋で無害な者だとは保証できなかった——彼女たちの多くは人生の苦痛と試練を味わってきており、もはや純粋という言葉では表現できないだろう。アンナやナナワのような魔女は、その中でもごく少数だろう。
そのため、集中して居住することで管理も集中できる。彼女たちが到着する前に、関連する条例や規則を定めておく必要がある。この点について、ローランには参考にできる経験が全くなかった。結局のところ、彼は国家安全局超能力オフィスの関係者でもなければ、復讐連盟の創造者でもない。誰が異能力者集団の管理方法を知っているというのだ！彼はとりあえず一般企業の人事管理方法に基づいて基本的な制度を暫定的に定め、後は様子を見ながら徐々に進めていくしかなかった。
ローランはもちろん、この案に多くの抜け穴があることを知っていた。しかし先駆者として、彼がやらなければ誰がやるのか？この辺境の小さな町に引きこもって、数十年かけてようやく工業化の入り口に辿り着けるかもしれない。しかし彼は仙道の修行者ではない、いったい何個もの数十年を持っているというのか？
時代を先導し、改革の最前線に立つためには、冒険心が必要不可欠だ。
彼がこれらの考えを羊皮紙に一つ一つ記録している時、バルロフがドアを開けて入ってきた。
彼は体についた雪を払い、王子に礼をした後、こう言った。「殿下、長歌要塞からの使者が参りました」