第264章 あなたに星空を贈る！（4章目！）

夏若雪は画面に目を落とし、映画の中で男女が雪の中でキスをしていた。

「葉辰、私の家柄や持っているものを全て置いといて、私はただの普通の女の子よ」

「私だって恋愛に憧れるし、映画も見たいし、屋台の食べ物も好きなの。これが私の本当の気持ち」

「孫怡が羨ましい、本当に羨ましい。時々夏家に生まれたくなかった、本当に」

「今日は突然、普通の女の子がどんな恋愛をするのか感じてみたくなったの。ネットでは映画を見たり、夜市を歩いたり、好きな人と一緒に過ごすって書いてあった。この感覚を試してみたい、たとえ一日だけでも」

「私の彼氏になってくれない？たとえこの一日だけでも」

夏若雪の瞳は光を放っていた。それは涙なのか、それとも彼女の美しい瞳に映る星なのか。

彼女に選択肢はなかった。

秦正陽と崑崙山のあの絶世の強者が江南省に戻ってくる。

おそらくすぐに、江南省は大きく変わるだろう。

彼女はその前に、心の願いを叶えたかった。

葉辰とカップルがする様々なことを経験したい、そして自分の最も大切なものを葉辰に捧げたかった。

葉辰は彼女唯一の逃げ道であり、選択肢だった。

秦正陽なんて、ふさわしくない！

この一日は、何も考えず、ただ今この瞬間を楽しみたかった。

たとえそれが彼女の最後の一日だとしても。

「葉辰、いいかしら？」夏若雪の澄んだ声が響いた。

葉辰は何が起きているのか分からなかったが、頷いた。「もちろん」

偶然や事故を除けば、これが夏若雪にとって本当の意味での初めてのキスだった。

もちろん、それらの偶然のキスも葉辰のものだった。

後ろから聞こえた咳払いの声で、二人は我に返った。夏若雪は頬を赤らめ、映画を見るふりをした。

葉辰は冷たい目つきで後ろの声の主を睨みつけた。

普通の人には葉辰の眼差しに耐えられない。

その人はその場で顔面蒼白になった。

映画の後、夏若雪と葉辰は夜市を歩き、江南省の灯会を見た。

その後、小舟を借りて江南省の秋庭湖へ向かった。

秋庭湖の水は澄んでいて、普段は満天の星空の時、多くのカップルがここを訪れ、空の星と湖面に映る星を眺める。

二つの星空は、とても輝かしい。

しかし霧霾と曇り空のせいで、空にも湖面にも星は見えず、当然誰も遊びに来ていなかった。

秋庭湖には彼らの小舟だけがあった。