第216話 失恋でイケメンになる
北原秀次は元々繊細な性格の持ち主で、友人の真剣な質問に対して、自分の答えが必ずしも正しいとは保証できないが、必ず熟考した結果であることは保証したい——これは友人に対する責任であり、自分の人格に対する責任でもある。
彼は長い間うつむいて考え込んだ後、内田雄馬の不安げな、式島律の期待に満ちた焦りの目を見つめ、静かに言った：「内田、これは君自身の感情の問題だから、僕はアドバイスしかできない。言う前に分かってほしいんだけど——この件について君がどんな選択をしても、友人として僕は反対しないよ。」
感情の問題では誰もが、本心に従って選択する権利がある。もし内田雄馬が本当に頑固なら、成功すれば祝福し、失敗すれば後始末を手伝う、それが友人としての務めだ。
内田雄馬は真剣に答えた：「分かってる、北原。」
北原秀次は頷いたが、珍しく目に迷いを見せながら、静かに言った：「もし僕が君の立場なら……もう行かないと思う。」
内田雄馬は眉を震わせ、呆然と言った：「行けないの？」
北原秀次は目を伏せ、落ち着いて言った：「内田、君が行くか行かないかは僕たちが決めることじゃない。ただ僕なら、もう行かないということだけだよ。」
彼は一旦言葉を切り、さらに説明を続けた：「もし僕が最善を尽くしたのなら、結果を素直に受け入れて、新しく始めることを選ぶよ——坂本さんとやり直すんじゃなくて、本当に価値のある人を見つけることさ。その人は今この瞬間も、街角で僕を待っているかもしれない。」
内田雄馬が躊躇いながら何か言おうとしたが、北原秀次は手を上げて制し、まだ話が終わっていないことを示した。「たとえそんな人がいなくても、僕は二度目の告白はしないと思う——あらゆる手段を尽くし、諦めない気持ちで、プライドを捨てて必死に懇願し、しつこく付きまとい、小細工や策略を使って、彼女の気持ちを変えさせようと強要したり騙したり、たとえ十八回結婚して十八人の子供を産んでいても手に入れようとし、死んでも同じ骨壺に入れられるようなことは、男としてすべきことじゃないと思う。」
「それは無頼漢のすることだ。」北原秀次は真剣に内田雄馬の細い目を見つめ、静かに誠実に言った：「内田、そんなことをすれば、それは本質が変わってしまう。それは恋愛じゃなく、単なる所有欲を満たすためだけのことになる——それは彼女を傷つけるだけでなく、もっと重要なのは君自身を傷つけることになる。」
「君は両想いになれる幸せな機会を諦め、限られた人生と精力を、心の底から君のことを好きではない人に費やすことになる。それは価値がない——さらに重要なのは、君は自尊心を持ち、正直に生きる男になる機会を放棄することになるんだ！」
内田雄馬は呆然となり、式島律は優しい目で北原秀次を見つめ、柔らかく言った：「北原君の言う通りだね。」
他の人は知らないが、少なくとも彼は北原秀次が同年代の人とは違うと常々感じていた。特に成熟していて落ち着いており、思いやりがある。普通の男子学生と比べると、より一層男らしく、このような言葉は自分には言えないだろうと思った。
彼なら、おそらく友人の頭を叩いて何が何でも行くなと命令するくらいしかできないだろう。
雪里も傍らで頷きながら、もぐもぐと言った：「美味しい、美味しい！」
他の人は知らないが、少なくとも彼女はとても感動していた。世の中にこんな素晴らしいことがあるなんて、じっと座っているだけで食べ物が次々と口元まで運ばれてくる。見ているだけで心が和み、涙が止まらず、よだれが四方に飛び散る。
内田雄馬は暫く呆然としていたが、軽く胸に手を当て、無理に笑って言った：「君の言いたいことは分かった、北原、ありがとう。」
北原秀次は頭を下げ、ただ静かに言った：「君が怒らなければいいんだけど、内田。」
内田雄馬は明らかにまだ未練があり、自分のアドバイスは彼が聞きたかったものではないだろう。
しかし内田雄馬は暫く黙った後、小声で言った：「そんなことないよ、北原、僕はバカじゃないから、分かってる。」
北原秀次はため息をつきながら慰めた：「内田、君が辛いのも、諦めきれないのも分かる。でも失恋は必ずしも悪いことばかりじゃない。中国に『塞翁失馬、焉知非福』という古い言葉がある。確かに君はしばらくの間苦しむだろうけど、これを心の試練だと思ってほしい……失恋は感情を深めさせ、人格を成熟させる。この時期を乗り越えれば、君は今よりもっと素晴らしい人になれるはずだ。」
内田雄馬は思わず頬に手を当て、驚いて尋ねた：「本当？」失恋でかっこよくなれる？
北原秀次は微笑んで言った：「もちろん、苦痛は男性が成長するための最良の栄養分だよ。」
男は女を悪くし、女は男を成熟させる……失恋は時として少年から男への分岐点となる、包茎手術とほぼ同じような性質だ——もちろん、全ての男子が失恋を経験しなければ成熟できないわけではないし、全ての男子があの手術を必要とするわけでもない。
内田雄馬は半信半疑で頷いた。しばらくして、憂い顔で嘆いて言った。「心の中がとても辛いんです。とても苦しいです。以前、本で『心が刃物で切られるよう』と書いてあるのを見て嘘だと思っていましたが、今日になってやっとその言葉が本当だと分かりました。心臓が痛むと、本当に誰かにナイフで刺されているようです...北原さん、阿律、分かりました。この件は忘れるようにします。私のことを心配しないでください。」
北原秀次は笑って言った。「誰もこの件を忘れろとは言っていないよ、内田！これは既に起きたことだ。私たちがすべきことは忘れることではなく、それと向き合うことだ。こういうことに遭遇して悲しくなるのは当然だ。私たちは人間で、感情があるからね。でも、これを糧にして、もっと良い、もっと優れた人間になることができる。」
彼は一瞬止まり、微笑んで、「失恋したからって自暴自棄になったりしないよね、内田。そんなことになったら、本当に軽蔑するぞ。」男は生まれながらにしてより多くの苦痛に耐えなければならない。失敗で簡単に打ちのめされる者は、決して真の男ではない。
転ぶことは怖くない。怖いのは立ち上がれなくなることだ。
内田雄馬は深く息を吸い、真剣に言った。「もちろんそんなことはありません！」
北原秀次は隣で豚の餌付けのような音を聞いて、思わず横目で見た。雪里に醤油を少し足し、水も注いで、詰まらないようにしてから、安堵した様子で振り返って言った。「それならよかった！」そして式島律を見て、付け加えた。「もちろん、だからと言って坂本さんを恨んだり、呪ったり罵ったりしてはいけない。できれば、将来あなたがもっと優れた人間になった時に、笑顔で彼女に『ありがとう、坂本さん』と言えるようになってほしい。」
命を奪わなかったことに感謝し、時間を節約してくれたことに感謝し、上を目指す意欲をより強くしてくれたことに感謝して——もし北原秀次なら、そうするだろう。未来のある日、再会した時に心から「ありがとう、○○さん。私が未熟だった時に、はっきりと断ってくれて、人生の正しい道に戻してくれてありがとう。あなたがいなければ、今日の私はなかった。私の成功の半分はあなたのおかげです」と言うだろう。
北原秀次は最後に内田雄馬の肩を叩いて、微笑んで言った。「内田、彼女があなたを見逃したんだ。あなたが彼女を見逃したんじゃない！乗り越えれば、もっと優れた人間になれる。」
内田雄馬は北原秀次に肩を叩かれてビクッとし、その後ちょっと間抜けな顔をして物思いに耽った。「そうだ、その通りだ、北原！将来純子ちゃん...いや、坂本さんと再会した時は、胸を張って彼女の前に立ち、男としての本当の器量を見せてやる...」
「そうだ、内田。十年二十年経てば、もしかしたらお前は成功して、大物になっているかもしれない。その時に今を振り返れば、坂本さんはそれほどでもない、ごく普通の人だったと気づくかもしれない。今の彼女の拒絶は、むしろお前の未来を作ってくれたんだ。」
「そうだ、その通りです、北原！」内田雄馬は何を想像したのか、顔に心からの笑みが浮かび始めた——解放感と少しの軽薄さ、そして期待が混ざったような表情で——彼は茶碗を取って一気に飲み干し、真剣に言った。「私は奮起して、今日から全力を尽くして、将来大きな事業を成し遂げます！」
式島律は長いため息をつき、感謝するような目で北原秀次を見つめた。内田雄馬はしばらく考え込んでから、表情がさらに決意に満ちた——そうだ、自尊心を捨てて必死に懇願するよりも、自分で立派な人間になって、将来再会した時にさらりと一言お礼を言う方が、男らしい。
彼はまだ十六、七歳だ。未来を想像すると気持ちが一気に高ぶり、思わずまた言った。「必ず出世してみせます！私は本気で頑張ります。誰も止めないでください！」
式島律は横で拳を握って励ました。「雄馬、頑張れ、応援しているよ！」
内田雄馬は式島律に向かって真剣に頷いた。「阿律、ありがとう。さすが親友だ！」しかし、どうやって頑張るか、どうやって出世するか考えると、少し自信がなくなり、目を二、三回転がして、今度は北原秀次の手を握り、同じく真剣に言った。「北原様、頼みますよ。将来成功したら、私のことも忘れないでください...そうだ、阿律のことも。私たち三人は親友で、命を懸けた仲間です。どうか富貴になっても、私たちのことを忘れないでください！私はあなたの上進を全力で支援します。あなたは上を目指すだけでいい、他の雑用は私に任せてください。」
北原秀次は彼を無言で暫く見つめ、その手を振り払った——このバカ野郎！私は支援なんか要らない、自制心はある！それに私たちはそんな命を懸けた仲じゃない、せいぜい普通の友達だ！
さっきの自分は牛に向かって琴を弾いていたのか？なぜ励ましの効果が違う方向に行ってしまったんだ？
内田雄馬は手を振り払われても気にしなかった。彼は北原秀次のことを理解していると自負していた。将来北原秀次が成功して、自分が落ちぶれても頼みに行く必要はない。北原秀次には能力があれば必ず手を差し伸べてくれるはずだ。そして彼は北原秀次の将来の成功を、自分以上に確信していた——北原秀次には才能があり、十分な努力もする。こんな人が成功しないなら自分にはもっと無理だ。自分を当てにするより彼を当てにした方がいい！
人生の真理その一：自分に能力がないなら、それは構わない。能力のある人の足につけばいい。
内田雄馬も実は長所や才能がないわけではない。彼は生まれつき取り入る才能があり、考えが及んだ途端に北原秀次に調味料を注ぎ、寿司を取り、熱心に世話を焼き始めた。式島律は半ば呆れ果てた——このバカ野郎、自分とは幼稚園からの十数年の付き合いなのに、こんなに親切にされたことなんて一度もない！
でも、ずっと北原君の側にいて彼を叩くのも失礼だし...
式島律はこの馬鹿な友人が元気を取り戻し、失恋のショックを既に忘れたかのように見えたので、もう構わないことにして放っておいた。そして先ほどの北原秀次の言葉を思い返すと、何か経験に基づいて話しているような感じがして、つい興味を持って、小声で尋ねた。「北原君、雪里さんに会う前に、付き合っていた人はいるの？」
彼は北原秀次と福泽雪里がカップルには見えなかったが、問題は北原秀次が雪里が彼女ではないと否定したことがなく、しかも雪里をよく連れて歩いていたので、普段の会話では雪里を北原秀次の彼女として扱うしかなかった。
隣では雪里が楽しそうに食べていて（味は普通だけど、量が多いね）、式島律が自分の名前を出すのを聞いて、頬を膨らませながら振り向き、澄んだ瞳で好奇心いっぱいに北原秀次を見つめた——秀次には以前彼女がいたの？今はどこにいるの？